【書籍紹介】発達障害うちの子人づきあいだいじょーぶ!?/かなしろにゃんこ。著 

前々回から、かなしろにゃんこ。さん(←リンクはにゃんこ。さんのブログ)の新刊の発達障害本に関連するシリーズ記事を書いてきたのだが(そのあたりの経緯はこちら→その1その2)、書店発売日も過ぎたことだし、そろそろろレビュー書いてしまおう。

商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。お買い物される際には、必ず商品ページの情報を確認いただきますようお願いいたします。また商品ページが削除された場合は、「最新の情報が表示できませんでした」と表示されます。 発達障害 うちの子、人づきあい だいじょーぶ!? (こころライブラリー)

かなしろにゃんこ。 講談社 2016-07-26
by ヨメレバ

 

発達障害コミックルポシリーズの第三弾

この本は「発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!?」の続編にあたる本だ。

前作がいまある支援策、支援システムの紹介に重きをおいたものであったのに対し、今回のものは人づきあいにスポットをあて、発達障害児者のQOLを上げるための家庭でできる対策に力点が置かれているように思う。

 

あ、これ(上記)では堅すぎる…

もうちょっとロコツにいってしまおう。

 

「発達障害者の人づきあいでのズッコケかた」
「ズッコケるメカニズム」
そして、
「ズッコケないための手近な対策」、
「ズッコケにくくするための考え方」
「ズッコケにくくするための子育てのポイント」

が、身体や感覚といった面からの影響も含めて描かれている。

といったところだ。

 

マンガでリアルな当事者像を描きだしながら進むのでわかりやすい(コマ割りも特に複雑じゃないのでマンガが苦手という人でもわりと読みやすい…と思う)。

 

 

ごく個人的な感想から

アスパラガスの会や狸穴猫が一部登場したりネタパーツを提供したりしているので、その部分に関しては内容を事前に知っていたわけだが、他の部分については数日前に講談社から献本が届くまでは読んでいなかった。

読んでまずはじめに思ったのは。

「取材に応じてよかったな~」

ってことである。

取材を受ける立場として、うまいこと切り取られてどうも主義主張と合わない方向性の中に突っ込まれる...のが気になるポイントだが、実は今回はそーいう心配はあまりしていなかった。

理由は簡単、かなしろにゃんこ。さんのシリーズ前作を読んでいたし、取材以降のやりとりが充分に信頼できるものだったから。

で、何がよかったな~のネタだったかというと、

「これは役立つ!そして暗くない!」

ということだ。

 

役立つ本に一枚噛めたとなれば取材に応じた方としてもそりゃ嬉しい。そして何かと悩みがちな発達障害関係者にちょっとでも明るくなってもらえるような本だったらなお嬉しいというわけだ。

 

発達障害者のリアルワールド

さて、それではちょいとレビューっぽく書いてみよう。
内容全般の紹介は講談社にこの本の特集ページがあるのでそちらを見ていただいた方がいいだろう。

私はそこに書いてない部分について書くことにする。

  

  

マンガならではの表現で発達障害者の感じ方が「見える

登場人物はほとんどが発達障害当事者、およびその家族である。全国を飛びまわって多くの方に取材したそうで、そこから抽出した発達障害者のリアル像が満載である。

つまり当事者風味はきわめて濃厚、医療関係者や支援者の目といったフィルターを通さない生の発達さんワールド広がっている。

  

しかもマンガという表現手段によって単なる「あるある話」から「発達障害者の外面と内面の不一致」や「ずっこけた時の内心」を視覚的に理解できるようにまでブラッシュアップされている。

  

こういった部分、我が子が理解しにくいといった思いに悩む発達障害児の親御さんにとって多くのヒントになると思うし、支援者にも対象者理解の助けになるだろう。当事者にとっても周囲の人に自分の中で起こっていることを説明しやすくなる。

イラストやマンガを取り入れた発達障害の本は多いがここまでうまくマンガで表現されたものはなかなかお目にかからない。

メジャーコミック誌で描いていた漫画家さんだからこその仕事だと思った。

  

当事者のふつーの悩みをどう解決するか?

リアル当事者の実録メインに構成された本だから発達障害者の悩みは当然沢山でてくる。

だが、悲壮感がない。

  

当事者本にありがちな理解クレクレ臭もない。

まあ狸穴猫が登場する章にそれがないだろうというのはこのブログに何回か足を運んでくれている方には簡単に想像つくだろうが、他の全部の章もそうなのだ。

  

そして笑える。

  

人づきあいの上での困りごとに直面したふつーの発達障害当事者があれこれ解決策を探ってきた生活の中での道筋、そしてそのための自助の策、支援の策があれこれ紹介されているがふつーの生活の中での解決の模索である。

  

そう、ほとんどの発達障害者はふつーにくらしている。

ふつーの生活をしようとする当事者のふつーの困りごとがなぜかふつーではないだけだ。困りごとではあるのだがコミカルなものになってしまう。

今風のいい方をすれば「ネタ的」とでもいうのだろう(我が家もネタ満載だからこのブログに大爆笑カテゴリーがあるし)、この本はそのコミカルさもしっかり味わえる。

そりゃ困りごとではあるので、深刻になろうと思えばなれるのだが、悩んでいてもはじまらないならコミカルさを味わっちゃったほうがお得である。

「どうやって接したら...」と悩むご家族、支援者さんが肩の力を抜くきっかけになるかもしれない。

 

いつからでもスタートできるということ

この本はもちろんなんたら療育の本でもなんたら療法の本でもないので系統的な手法が書かれている本ではない。リアルの当事者が泣いて笑ってゆる~く取り組んできたいろいろで構成されている。

支援機関による支援のシーンも描かれているが、それも日常のくらしについてのものだ。その日常生活の中でいうのが重要な視点だと思う。 

だからこの本には

  

「これができてなきゃ次には進めない」とか「この時期にやらなきゃダメ」<

ってなものはない

つまり...いつからでもスタートできるものばかりである

 

当事者の人づきあいの問題を感覚の問題との関連も含めて取り上げているというのも興味深いポイントだが、

この「いつからでもスタートできる」というのがこの本を通してあるような気がする。

もしかしたら、それこそが、発達障害の息子さんと泣いて笑って工夫しながら暮らしてきた、かなしろにゃんこ。さんが読者へ伝えたいことなのかかもしれない。

ちょっと感動的なエピローグを読んで私はそんなことを思った。

 

 

 

と、ちいと含蓄深げな締めくくりをひとしきり書いたところで、間違いなく蛇足であるもう一つの感想をかいてしまおう。

エピローグのネーム(企画段階の下書き)読んでまず思ったのは...

うわ~!酒しこたま飲んで上機嫌で言いたいことほざいてたタヌキ(亭主)のセリフが超感動ネタになってる!!!!びっくり!

であった。

 

いやほんと、ものごとは一面だけでは語れないものである。

 

 

そういや狸穴猫やアスパラガスの会がどの辺に出てくるのか書くのを忘れてた。

1章はアスパラガスの会がネタに、そして2章、3章は狸穴猫のインタビューがネタに、そしてエピローグにアスパラスタッフと狸穴家の面々が登場します。

 

 

▼この本は泣けた…

漫画家ママの うちの子はADHD (こころライブラリー)

かなしろにゃんこ。 講談社 2009-06-26
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by ヨメレバ

 

 

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【書籍】治ってますか?発達障害/南雲明彦・浅見淳子著

今日は「治ってますか?発達障害」という本を紹介

ずいぶん思い切ったタイトルである、いや、もうちょっとはっきりいってしまおう。

挑発的ですらある(「相変わらず」をつけるべきかもだが)

だが、この本は発達障害当事者に、そして発達障害児者に関わるすべての人に目を背けてはいけない様々な問題を突きつける本だと思う。

 

 

著者のお一人である南雲明彦氏は発達障害の一種であるディスレクシア(読字障害)の当事者で、次世代のために講演等さまざまな活動されている方。もうお一人は「自閉っ子シリーズ」を出している花風社の浅見淳子氏。

そして途中ちょっとだけ「自閉っ子の心身をラクにしよう!」の著者である栗本啓司氏が登場する。

 

 

版元である花風社は発達障害に関する本を多く出している出版社だが、かなり挑戦的な内容のものも多いし、目から鱗的な本も多い。

 

治ってますか?という問いかけから

正直なところ、タイトルだけで「え~?」と避けてしまう人もいるかもしれない。

まあ、医者も支援者も「治らないので周囲の理解で生きやすくしていきましょう」ってなことを言う人が結構多いので「発達障害は治らない」を信奉する人が出てくるのは必然ではある。

だが、昔不治だといわれた疾患や障害でも、治るものは数多く出てきているし、治らないまでもかなりの機能改善が可能なもの増えてきている。「発達障害は治らない」を前提とする支援が主流という現状は私は違和感を感じる。

 

そしてよくきく「ありのままでいいよ」、「周囲の理解を」というセリフが決して発達障害児者をラクにしないという現実。さらにラクに暮らせる方法、ツールをかたくなに拒んでしまう当事者の存在。

この本はそういった発達障害児者界隈や支援業界にあるさまざまな矛盾を、まあ見事にバッサリと斬ってくれている。

 

「うんうん、治さなきゃいけない部分はあるんだよ」</p>

「そうそう、生きづらさなんていらないわあ!」

「ホント、いらん支援や大きなお世話がはびこってるよな~」

 

と、頷きながら一気に読んだ。

そして読了後、私の脳みそからポンと出てきたのは「痛快!」という単語だった。

まあ、私が痛快と感じるということは、ある一群の人たちに辛辣なのであるから、かなりグサッとくる人もいるかもしれない。反感を持つ人もいると思う。

 

戦いつづけてきた人のもつ説得力

著者のお一人の南雲氏はディスレクシア(学習障害の一種、主に読み書きがしにくいといったもの)の当事者である。

読み書きの問題をきっかけに二次障害や引きこもりも経験したという(このあたりはLDは僕のID ―字が読めないことで見えてくる風景にも詳しい)。

だが、南雲氏はディスレクシアだが現在は本も読めば文章も書く方である。

もちろんはじめから易々と読めたり書けたりしたわけではない。努力を重ねて読めるようにしたのであり書けるようにしたのである。

そしてこの本の中で南雲氏はかなり辛辣に「ありのまま主義」を批判する。

もがいてきた人だからこそ、南雲氏の「ありのままではいけない」という言葉には重みがある。

(おまけだが、南雲氏のツイッター発言はなかなか本質をつく発言が多くて楽しい。氏のツイッターアカウントは @nagumo11

 

「土台づくりが大事」と語る南雲氏がどう障害と向き合ってきたか、どうやって自己肯定感を自ら育んできたのか?どうやってできることを増やしてきたのか?それを読むだけでもこの本はかなりの価値があると思う。

 

「私は(うちの子は)ディスレクシアではないから関係ない」と思われるかもしれないが、障害とどう向き合うか?そして支援機関、支援者とどうつきあっていくのか?どうすればできることを増やし、自己肯定感が上げられるのか?これは自閉症スペクトラムもAD・HDも共通の部分だろう。

 

発達障害のある人生をどう生きるか?

「治ってますか?」というかなり挑発的な言葉には
「さあ、どうする?障害だからと(自分の、子の)人生あきらめる?それとも人生切り開く?」という、目を背けてはいけない問題を突きつけるような気迫を感じる。

悩んでいる人も多いと思う。

しかしビビる必要はないので安心して欲しい。

 

とりあえずどこから?という場合のヒントになることも栗本氏の登場する章を中心にちりばめられている。

身体とのつきあい方、各種ツールの取り入れ方などなど...。

なかなかがんばれない人へのアドバイスまであるところなど、けっこう親切である。

 

 

発達障害界隈にある不思議な「治す」アレルギー

発達障害関連で「治る」や「治す」って用語を出すと「治るというのはけしからん」とか「治る治らないというより個性としてとらえたほうが...」「結局軽いか重いかでしょ」って方面に話がすべりやすい。

「治るか」を問題にしてはいけないような風潮すら感じる。

 

それってちょっと異常な状況ではないかと私は思うのだ。他の難治性疾患で、「治る」「治す」という用語をつかうと批判がとんでくるなんていうのは私は聞いたことがない。せいぜいのところ「胡散臭くない?」程度だ(そして胡散臭いかどうかは年月がたてば自ずとわかる)し、個人レベルで治ったという話をきいても「よかったねえ」or「いいなあ」で終了だ。

 

「治る」「治す」といった用語への過剰とも思える反発はどこから来るのだろう?

 

そして発達障害の症状が変化する人はけっこう多い。私にしても子どものころあって今はない症状もある。ならば症状の何と何がどこまで治りやすいのか?何と何が変化しにくいのか?を検討する必要はあるだろう。

 

そして今の発達障害の定義にある症状は本当に一次障害なのか?特にASDではコミュニケーションとか社会性なんてのが診断定義に含まれるあたり、実はかなり怪しいと思う。

「治す」「治る」という用語への反発が阻害している議論も多いと思うし、本来可能な努力を放棄する言い訳になってしまっていることもあると思う。

 

この本は、そういった風潮に対しても真っ向から勝負を挑んでいる本でもあると思う。

そして、発達障害児の子育て、発達障害児者の支援において真に大事にすべきことはいったい何なのかを読者に問いかけてくる本でもある。

「周りに理解してもらいましょう」「がんばらせてはいけません」だけの支援に疑問を感じている方には特におすすめの本だろう。

 

 



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【書籍】芋づる式に治そう! 栗本啓司 浅見淳子 著

ひさびさの書籍紹介。

自閉っ子シリーズでおなじみの花風社の新刊、「芋づる式に治そう!」。
直販で早々に入手していたのだが、まあ薄い本なのに考えさせてくれるところが多く、さてはてどこに触れようか?と迷うこと半月というわけだ。

芋づる式に治そう! 発達凸凹の人が今日からできること

栗本啓司,浅見淳子 花風社 2015-02-19
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by ヨメレバ

身体アプローチの第二弾

この本は、「自閉っ子の心身をラクにしよう! 」という本の続編に当たる本だ。内容はというと自閉症児者にありがちな身体のトラブルに関する東洋的な見方の数々と、操体法をベースにした身体調整のユニークで簡単な方法の紹介である。花風社おなじみの対談形式なのでとっつきやすい本だ。

自閉症児者にありがちな睡眠障害の問題、身体の使い方の問題、そして季節の変わり目の不調などのメカニズムとその不調を防ぐための対策とかなり盛りだくさんな内容。

自閉症は身体障害だという視点

冒頭から少し引用する/p>

「自閉症の人は身体障害なんじゃないの?」なんて思ってしまうくらい、自閉症をはじめとする発達障害の人は身体的に困った症状をいっぱい抱えています。たとえば睡眠障害。自閉っ子の睡眠障害は手強いものがありますね…

確かに身体面は無視できないように思う。姿勢以外にも睡眠だったり疲れやすさだったり身体の硬さだったりまあいろいろある。アレルギー持ちの人も結構多いような気もする。

良く眠れてなきゃあれこれ大変だろう、うまく身体を使えてなきゃ妙な疲れもためやすいだろう。排泄がうまくコントロールしにくきゃ気分も落ち着かないだろう、汗かきにくけりゃ夏場しんどかろう…というようなことは非常にわかりやすい話であるが、疾病を部分で捉える現代医学では抜け落ちやすい視点だ。

実は思い当たるところがたくさんある。

睡眠の問題

私自身、子供の頃を思いおこすに、確実に睡眠障害だった。

物心ついた頃から寝付きは悪いし寝起きも悪い、そして寝た気がしない。布団に入って1~2時間くらい寝られないのはザラだった、あげく睡眠不足になるというコース。

たまたま若い頃に気功だの太極拳だのに出会い、寝る前にちょっと簡単な気功(スワイショウ、タントウ功、十字功)やるとすぐ寝られるようになったのだが、それらはこの本に出てくる身体アプローチの手法がよく似ている。そしてその解説を読んで、

そうか!そういうことだったのか?へえええ!

と、ひとり納得してしまったのだが、自閉症児者は身体の使い方を学びにくくできているのかも知れない。

ま、とりあえず気持ちいいし手軽である。気功とあべこべ体操(これはフェルデンクライス系)にプラスして、この本の金魚運動が寝る前メニューのラインナップに加わった。

腰と踏ん張りの問題

この本の中盤に腰と踏ん張り、頑張りに関する話が出てくるのだがこれにも思い当たる節がある。

子供の頃に何事も「腰を入れる」のが大事だというのは父からしつーこく教わっていた。
たまたま父(本業は洋服職人)が空手の有段者だったので、遊び半分に時々教わっていたのだが、父に「俺を押して見ろ」と言われていくら押してもぶつかっても父がびくともしないのだ、そして動作が妙に速くて隙がない。父は細身だし大柄な人ではなかったので子供心にもかなりびっくりであった。

さらに日曜大工でのこぎりを引く動作の構えや、様々な日常の動作でも腰が入らないと力が入りにくいということや「力を抜くこと」「脇を締めること」などをこれまたしつーこく教わったりと、結構立つときや動作するときの重要ポイントをたたき込まれた感はある。

踏ん張り、頑張りやすい身体の使い方というのは様々な面で余力を持てるということに繋がるような気がする。そしてそれは身体の動きがつかみにくい自閉症児者では抜け落ちが生じやすい部分である。改善できるに越したことはない。

自閉症じゃなくても現代人の疲れにもよさそう。

現代社会では老いも若きもどうしても身体を使うことが減っている。となれば自閉症児者でなくても身体の使い方を学び損ねる可能性は高くなるだろう。調子も崩しやすくなるかもしれない。

肩こり、腰痛、不眠、季節の変わり目の不調…ちょっとした体操でスッキリできればそれに越したことはない。

自閉症児者のQOLを低くするのはいったい何か?

花風社の浅見淳子氏は自閉症に関して「治る」という用語をよく使う。書名に登場するのも初めてではなく、「発達障害は治りますか?」という本もあった。

発達障害は治りますか?

神田橋 條治 花風社 2010-05-25
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by ヨメレバ

まあ、この辺り、なぜか一部の当事者、親御さんにはうけが悪い。他の書籍をみれば自閉症といえば「治らない」が合い言葉のごとく出てくるのだから、それからすると「治るなんて…胡散臭いのでは」と思うのかもしれない。用語の厳密さにこだわるタイプの人にとってはその用語使いがとんでもなく重大な過誤に思えてくるのかも知れない。

しかし、この本を親御さんなり当事者なりが読んで思い当たる点がまったくないということはないだろうと思うし、そしてそれこそがQOLを下げている要因であることもまた多いだろう。

当事者のQOLの向上に用語は実は重要ではない。重要なのはQOLが上げられるかどうかと言うことである。低コストで安全に試せる方法があるのなら試した方がお得だろう。

そこそこ快適にくらせるようになれば自閉症が治ろうが治るまいがそれもまたどうでもいいのである。

社会性を主体とした診断用の定義しかない現在の状況で「治らないから周囲が理解を」が合い言葉では、治るところもハビリテーションで改善・解消できるところまで捨てることにないかねない(今の自閉症スペクトラムに関する常識ってツッコミどころ満載である、どこだどうツッコミどころ満載なのかはスライド動画化してあるのでこちらをどうぞ)。

医者も支援者も、そして親御さんや当事者もこの本のタイトルにこめられた(と、私は勝手に思ってるのだが)「自閉症は本当に治らないのか?」という問いかけを真摯に受け止める時期に来ているのではないだろうか?


難しい話はさておき、ごく簡単で低コストでリスクの低い方法を試してしつこい疲れや不眠とおさらばする可能性を拓くか、試さずにしつこい疲れや不眠と付き合い続けて不満や辛さを持ち続けるか? その選択は個人の好みではあるが、私なら前者を選ぶ。

自閉っ子の心身をラクにしよう!

栗本啓司 花風社 2014-08-28
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by ヨメレバ


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ユニークな本が出たので速報 → アスペルガー症候群の難題/井出草平著

すでにあっちこっちで話題になっているので目にした人も多いかもしれない。
そしてまじめな方はこの本を「ユニーク」と言ってしまうとそれだけで反発を感じるかもしれない。


アスペルガー症候群の難題 (光文社新書)

井出 草平 光文社 2014-10-15
売り上げランキング : 4658
by ヨメレバ




著者の井出草平氏は大阪大学の社会学の研究者で「引きこもり」の問題や社会的逸脱のについて取り組まれている方で、2010年からは「NPO法人発達障害をもつ大人の会」の監事もされている方なので、発達障害者のリアルもある程度ご存じの方と推察される。


この本はアスペルガー症候群と犯罪をどう見るかといった本である。
ほとんどタブー化されていた犯罪の話がここにきて表に出てきたかとまあ、ちょっとびっくりするとともに、井出氏の著作であることが実は結構びっくりであった。

まあ、案の定、ネット上でもリアルでも当事者の評判はあまりかんばしくないし、発達障害児の親御さんにもかなり神経質な反応をする人もいるようだ。

「自分or我が子に犯罪予備軍というレッテルを貼る不届きな本」
という主張だったり、
「こういった本による犯罪との関連づけによって社会に偏見が生じて暮らしにくくなる」

といったものが多いようだが、正直私にはなぜそういう主張になるのかよくわからない。

この本では適応状態の悪さが講じて犯罪に結びついた例がいくつか挙がっているが、そのケース分析については特に強引な論理展開もないし、「犯罪に至る前にうまいサポートがあったらなあ…」程度のごくごく控えめな態度である。

ともあれ、いままでは、発達障害児の子育てや支援教育のあり方について「触法行為を起こさせないために」といった視点が必要だろうという視点の本がでることはなかったどころか、マスメディアでちょっと犯罪と障害の関係などを言及するだけで自閉症協会あたりが毎度速攻で「いわれなき差別や偏見を生じる」というような声明を出してきたことを考えれば、時代の移り変わりを感じさせる本だ。

(とはいえ、自閉症協会に関わる研究者も実は自閉症と犯罪についての研究もしていたようである。(リンク先参照)

いくら適応状態が悪くても高度なコミュニケーション能力を悪用したような確信犯的な詐欺をするアスペルガーは定型者に比べて少ないと思うし、集団での苛烈なイジメやオヤジ狩りのような集団悪のりエスカレート型犯罪も少ないだろう(調べてないのでこのあたりは想像の域を出ないが)。

そんな「なさそうな犯罪」が多いと喧伝するような本では決してないのでさほどの誇張があるとも思えない。

定型者にも犯罪の特徴はあるし発達障害者にも特徴がある。
それぞれの発達特性に応じて触法行為を抑制していく方策をとっていくほうが効率が良かろうと私は思うのだが、井出氏の主張もそのあたりは大筋似た感じである。

最終章で挙げられている対策はちょっと弱いかなというか尻すぼみ感を感じたが、まあ、そこらあたりは立場もあるのだろうかとか勝手に想像している。

まあ、何はともあれ毛嫌いしないで読んでみてもいいと思うので紹介。
なんでも自分に結びつける癖さえなければさほど抵抗のなく読める本ではないかと思う。



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【書籍】自閉っ子の心身をラクにしよう! 栗本啓司著

今日は書評、しかもかなりおすすめ度の高い本だ。


自閉っ子の心身をラクにしよう!

栗本啓司 花風社 2014-08-28
売り上げランキング : 14971
by ヨメレバ



操体法をベースにした自閉っ子向けの心身のコンディショニングの本


著者の栗本氏は小田原でからだ指導室あんじんを開いておられる方。今年の6月に開かれたこの本の版元である花風社主催のコンディショニング講座に参加した際にお目にかかったが、細身の好中年といった感じで作務衣がよく似合う方。



この本の末尾に栗本氏の読んできた本ということで様々な書籍が挙がっているが、その書籍名からも、氏が洋の東西を問わず、様々な手法や理論を柔軟に取り入れ、現代人の心身を癒す方法を構築しようされている方だというのがうかがえる。





簡単に試せるボディワークのハウツーがぎっしり


実はこの本は花風社の自閉っ子シリーズの中ではかなり異色である。


ニキ・リンコさん、藤家寛子さんの体験談や変化などから自閉症児者の不思議に迫っていくタイプや、治療者、支援者として成果をあげげられている方のノウハウや考え方を探ったり、そこから問題提起をしていくといった感じの本が多いのだがこの本はまるで異なる。


読んですぐに使える本である。


難しいことはとことん抜きにしてあるといった印象すらある。


説明部分もとても簡潔かつ感覚的に理解でき、うんうんなるほどと思いながらサクッと読み終えられる。この強烈にサクッと読める感は対談本だからというわけではないと感じる。たぶん編集方針なんだろうと勝手に納得。




棒人間からの脱却は関節から


自閉症児者の姿勢の悪さや歩き方の問題は私も前に書いたことがあるが、栗本氏も同様の現象に着目していたようである。


この本では姿勢の問題に関するアプローチとして、操体法の手法をベースにした手法が紹介されている。その要が「関節から」という視点だ。


確かに接触にたいする過敏がある自閉症児者には身体の末端部分へのアプローチのほうが容易だ。また身体各部はつながっているのだから、末端に近い部分へのアプローチが全身に波及するというのは東洋的な考え方から言えばごく自然なものでもある。


体幹部への身体接触を嫌がる自閉症児へもアプローチが可能な方法というのは非常にありがたいものだ。



紹介されているワークのほとんどが「体力」とか「がんばり」を必要としないところもやってみる事への敷居を低くしてくれるポイントだろう。



睡眠障害、多動や自傷を身体の使い方という視点から見る



何かで緊張していて睡眠に問題が出るというのは別に自閉症児者でなくてもあるだろう。


この本は、自閉症児者の様々な行動の問題をそういった誰にでもある現象の延長線上にあるものとして捉え、さまざまな解決方法を提案してくれる。


睡眠、排泄、自傷、多動の問題は自閉症児者のQOL(生活の質って訳すことが多い)に大きく影響する問題だし、できるなら何とかしたいと思う部分ではあるが、ほとんど投薬での対処しかなかったものだし、その対処がためらわれる部分でもある。


栗本氏はここに姿勢との関連を見いだし、身体全体のバランスといった東洋的な視点と操体法という手法を持ち込むことによって対処方法を編み出してきたわけだ。いろいろな場面でしっかりした姿勢が大事とも言われるし、良い姿勢で無駄のない動きをする人には余裕があるようにも思える。感覚的には非常に納得がいく話だ。



あまりこういった視点での対処法を提供してくれる本は多くないし、あっても取り組むのに高額な費用がかかったり現実的でないのだが、この本で紹介される身体ワークは身体ひとつあればいいので気軽にやってみることができる。それなら試してみても損はないだろう。



自閉症スペクトラムの理解の助けになるだけでなく、使える方法の引き出しを増やすといった意味合いからも、自閉症スペクトラム児の親御さん、自閉症スペクトラム当事者、そして支援者といった自閉症に関わるすべての人におすすめできる本だと思う。




自閉症児の親御さんも楽にという思想



自閉症スペクトラム児をもつ親御さんは大変だ。多動などがある幼児では親はその対処だけでもへとへとになる。さらに親御さんが定型発達者の場合だと、児の行動・言動が親の想像の範囲から大きく飛び出してしまうのでなかなか理解しにくい上に予測もつかず右往左往することになる。疲れるのはむしろ当然だと思う。


子どもに優しく接したい、理解したい、できるだけ良いアプローチをと思っていてもエネルギー切れになりやすい由縁である。親御さんのエネルギー切れをなんとかすることも重要な課題だ・


この本では数々の身体アセスメントと身体ワークが紹介されているが、その大半は子どもだけでなく大人もできるものだ。親子でやるものもある。



高価な機材を必要とするものは何一つないのでお財布にももちろん優しい(どのくらい優しいかというと、4000円のデジタル耳せん買うのに数ヶ月呻吟する程度しみったれた狸穴猫が全く気にならない程度である)。


身体ワークの紹介がはじまる9章の冒頭は親御さん向けの身体ワークがでんと構えているのだ。


毎日子育てにがんばっている親御さんにも楽になって欲しいという著者と版元の願いが感じられる部分である。


私もやってみたが、とても簡単なワークだが非常にリラックスできるものだった。


 


※おまけ  身体ワークというのは合う合わないが多いとも言われるが、この9章冒頭のワークはかなりヒット率が高いものだと私は考えている。というのは、狸穴猫が最近ときどき出かけているフェルデンクライスボディワークのレッスンの冒頭にやるワークがこのワークとの類似性が高いものだというのがある。手法の理論面の違いを超えて採用されるアプローチというのは本質に迫ったものである可能性が高いと考えられるからだ。








言葉にこだわるASD者の皆さん向けの注意書き



この本の内容の厚さとその語り方の平易さは特筆に値すると思うのだが、読みやすい反面、成人のASD者などで言葉の意味にこだわってしまう癖のある人には辞書的意味から遠い感覚的表現が多用されることによって若干読みにくさが生じてしまうかもしれない。



ちょっとだけ引用




今見てきたとおり関節の可動域の少ない人もいて、それが実は「じへいっこ」の姿勢のつま先立ち等につながるのですが、一方で関節がつながっていない人もいます。

自閉っ子の心身をラクにしよう! p31より引用




この「関節がつながっていない」という言葉に「関節はつながってるよ」とポンと浮かんでしまい拒否反応を示してしまう人もいると思う。だがちょっと待って欲しい。



「関節がつながっていない」を「関節の前後がうまく連動していない状態」に


「関節をつなげる」を「関節の前後が連動できることを脳に学習させる」に、それぞれ読み替えるだけで拒否反応は消えるはずだ。



こういった読みかえは基本、個々人が勝手にやるものだと私は思っているのだが、この本の内容は成人当事者にもあてはまることが多いし、身体ワーク部分もすぐ試せることが多い。もし上記のような表現の問題だけで毛嫌いしてしまってはあまりにもったいないと思い、今回はあえて読みかえ例を書いておく事にした。




勇気をもって道を開くということ


本の内容からはちょっと離れるが、この本が出版されたということに私はとても勇気づけられた。


自閉症スペクトラムの療育や適応改善で、身体へのアプローチといえば感覚統合療法が有名ではあるが、それとて効果に関する充分なエビデンスが無いと批判されることもある。ということはどういうことかといえば、この本の出版には「個別性が強すぎる」とか「エビデンスがない」などの批判の声が出る可能性がつきまとうということである。


自閉症児者の姿勢をはじめとする身体面の問題は支援の現場では認知されていたことだろうが、その理由にまで触れたものはいままで無かったのであるから尚更だ。



こういった背景を考えるに、この本は著者と版元の勇気の結晶であり、それは自閉症児者とその親御さんへの力強いエールである…と、勝手に解釈して勝手に感謝しておくことにする。



ついでだから書いておくが、そもそも、自閉症スペクトラムというものが感覚面の問題をのぞけば「社会性」に関連する生活行動レベルの事象で定義され、その原因が「脳の器質的障害」とされている状態でEBA(「エビデンスに基づく治療」と訳される)に準ずる療育が適切に選択できるのか?といえば否だ。


自閉症児者の身体面の問題すらろくすっぽ障害の定義に取り込まれていない状態では「どこからどこまでが療育で変わる可能性がある問題なのか?」が判別できるわけがないだろう。「表面的なできること」を増やせるかどうかしか判定材料にできない現状で、心身の全体に及ぶような療育法を、エビデンスを元に判定できるわけはないというわけだ。


それだけに親御さんは療育の選択に悩むだろう。かなり有望そうな方法からどう見ても怪しい方法まで、そしてタダに近い方法からめいっぱい高額な費用がかかるものまでと、療育法自体玉石混淆であるのだから尚更である。


親は我が子をじっくりと観察し、害がなさそうで良さそうな方法を、自分の目で勇気をもって選ぶしかないわけだ。




ただまあ、そんなややこしい話はさておいて、まあ、まずは9章の身体ワークでスーパーリラックス体験をしてみてもいいかもしれない。



身体が欲するものはきっと身体が教えてくれるさ
…というちょっと東洋的な身体観を振りまいて本稿は終わることにする。






自閉っ子の心身をラクにしよう!

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10年目の自閉っ子、こういう風にできてます!―「幸せになる力」発見の日々

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↑この本もなかなか興味い深い本だった。










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【書籍】伸ばそう!コミュニケーション力/森嶋勉 著

本日は、書籍「伸ばそう!コミュニケーション力」の書評。

この本を読んで「おおお!これは!」と講演会に行ってきたという話はちょっと前の記事「アスペルガーと身体の芯とコミュニケーション-森嶋勉先生の講演を聴いてきた-」に書いたわけだが、今日はどこいらで「おおお!」と思ったのかについて書いてみる。



伸ばそう!コミュニケーション力―不器用でも、体力なくても、友だちいなくても、今日からできるワクワクトレーニング

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さて、この本は、スポーツ塾 チットチャットの森嶋勉(もりしー)先生の著書。「自閉っ子シリーズ」でおなじみの花風社の本である。

花風社の浅見淳子さんとの対談形式で非常に読みやすい。そして厚さも本文141ページとさっくり読み切れる分量になっているので厚い本が苦手なかたにも抵抗なく読み進められると思う。


さて内容。


ページ数が控えめなのだが中味は濃い。


親と子の関係性、そしてコミュニケーション力とはなんぞや?というところから始まって、身体づくり、スポーツとコミュニケーション力との関係という、一見あまり関係なさそうなものが実は結構関係が深いといった話がテンポよく展開されていく。


体感が弱かったり、過敏な部分があったりと、なにかと身体の問題を抱える自閉っ子にとって、身体の使い方というのはとても大きな課題である。
身体の使い方が下手であることによって、さまざまな能力が阻害されていたりするのであれば、それはトレーニングする価値があるだろうし、スポーツを通して「コミュニケーション」を理解していけるのであれば、それはトライする価値があるだろう。


目次を読んでみると、あけすけな…というかわかりやすい項目が並ぶ。

ちょっとピックアップしてみる。


「人のせいにしなくなる人」になるためのトレーニング
「人生の思いがけないできごとに慣れる」ためのトレーニング
「キモイ」といわれなくなるためのトレーニング
「びびり撲滅」のためのトレーニング
乱暴な振る舞いをなくすためのトレーニング



身体のトレーニングについては私自身が結構通ってきた道という部分もあり、読んでいていちいち納得である。
身体で覚えるというのは実に手っ取り早いやり方なのかもしれない。



そして、実はこの本身体面だけではない部分も大きい。


後半では、「自己肯定感をはぐくむチャレンジのさせかた、ほめ方」という重要なポイントが惜しむところなく説明されている。

自己肯定感をはぐくむために「ほめて育てろ」というのはよく言われることだが

「じゃあどこをどうほめればいいの?」

というのがなかなかつかめないお母さんも多いだろう。


この本を読んで私が思い出したのは塾業界に片足突っ込んでいた頃のこと。
あの業界、週に1度のアプローチで「教えてない教科まで伸ばしてしまう講師」というのがいて、
まあ私もそういう教師の職人芸的な技をしばしば盗ませてもらっていたのだが、森嶋先生の実践はその職人芸的なやり方とも大筋で通じるところがある。


この技を身につければ子育てがかなり楽になること請け合いである。
説明が結構かみ砕いてあるのもありがたい。


この部分だけでも元が取れるだろうな~と思うのであった。



まとめると、自閉症児者におけるスポーツの効用あれこれとトレーニングの方法論、子育てが楽になる考え方と内容盛りだくさん。



実にコストパフォーマンスがいい本だ。


というところで書評終わり。




= おまけ ===========

書評を書こうとこの本を机において置いたら娘がひょいっと手に取り、めざとく「チットチャットで使っている用具一覧」のページを発見。

「うわ~、やってみたい」!の連発。

運動好きの娘にもかなり魅力的に映ったようだ。
腹の中で「みーちゃん、キミに必要あるんかい?」とは思ったが、まあものは試しとホームセンターでバランスボールを買ってきた。

そしてその晩…バランスボールの上で足を上げたままバランスをとりながら座って漫画を読んでいた娘がいた。

こうなると、難易度をどう上げるか頭の痛い狸穴猫であった。





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【書籍】読む目・読まれる目-視線理解の進化と発達の心理学/遠藤利彦 編著

本日は書評。


初版が2005年の暮れだから結構前に発行された本である。2週間ほど前にツイッターで流れてきた情報から芋づる式に発見したのだが、久々に脳天直撃してくれた本だった。



読む目・読まれる目―視線理解の進化と発達の心理学

遠藤 利彦 東京大学出版会 2005-12
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視線研究の第一線のダイジェスト



この本は平たくいえば「目は口ほどに物を言う」とはどういうことか、そして「いかにして目は口ほどにものをいうようになったのか?」についての研究のダイジェストである。


視線理解からどういった情報が読み取りうるのか?
なぜ視線がコミュニケーション手段の1つとして機能するのか?
視線がコミュニケーション手段として機能するための目の形態進化
人間と他動物との視線利用のされかたの違い


などなど、なかなか盛りだくさんな内容がぎっしり詰め込まれている。


自閉症者児は定型発達者に比べて視線が合いにくいというのはよく知られた話だが、自閉症児での「目が合わない現象」の分析についてもかなりのページが割かれている。


文章が平易で読みやすいこともあり、あっという間に読み進めることができた。


定型発達者のスーパーマンぶりの詳細が明らかに




読んでいて最初に私の脳天を直撃したのは「健常者」の視線理解に関する機能のあまりの複雑さだ。

どうやら健常者には「顔認知装置」だけでなく「視線検出装置」とよべるようなシステムが備わっていて、視線だけでかなりのコミュニケーションが可能なようである。

そしてさらなる追撃は、成長段階での社会的情報収集がその能力をフル活用して行われていくといったくだりだ。


一つ一つの現象とその背景にある機能についての記述を


「ほー、どうみても私にはこの機能なさそうだわ~」

とか

「定型さんってやっぱりスーパーマンだわあ」


と妙に納得しながら読んでいったわけだが、


「学習に使われているシステム」が健常者とASD者では異なるといったあたりは、ASD児の療育に新たな地平を切り開く材料になるかもしれない。また、「視線理解」というのは、自閉症スペクトラム児者の状態像の多様さを説明するための重要なキーワードになるかもしれないとも思った。


読みやすいとはいえ一応学術書であるから、そのままハウツーとして利用できるような本ではないが、ASD児の養育にあたる親御さん、ASD児者の支援者には「ASD者に何が無理で何が無理じゃないのか」を検討する材料を提供してくれる本だと思う。





秀逸な編集にしびれる



余談ではあるがこの本、非常に読みやすい。
章立ての流れといい、文章のこなれ具合といい、専門書らしからぬすばらしさで非常にスムースに読み進めることができる。では内容が薄いかといえばそうではなく、情報の質・量ともに専門書たるに足るものをそなえている。
さらに素晴らしいのは著者が複数しかも10人超とかなり多いにもかかわらず、ぎくしゃくした感じがまるでしない。
これは編集の腕だと思わざるを得ない。


内容に満足、そして読みやすさにしびれる。
実にいい読書だった。





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【書籍】アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?/米田衆介著

臨床から生まれたアスペルガー症候群の障害モデル

春だ…花粉の季節だ。 私はそれほどひどい花粉症ではないものの、暖かい日に外に出ると目がかゆくなる。 というわけで外に出るのは億劫なので 家の中で本を読む。 このところでだいぶ本を買ってしまったので書評がちょっと続く可能性はある。

というわけでいってみよ~。

アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える (こころライブラリー)

米田 衆介 講談社 2011-12-17
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著者は東京の神田にある明神下診療所の米田衆介医師。 東京では結構有名な人らしい。

アスペルガー関連の本が雨後の筍のように出ているが、特徴の羅列+理解と支援をのかけ声ばかりの本が多く、ちょっと食傷気味だったのだが、この本はかなり斬新な切り口で興味深く読むことができた。

アスペルガー症候群の特徴といえばローナ・ウィングの提唱した三つ組みの特性が有名だが米田医師はウィングの三つ組みを症状分類的なものと捉え、さらに本質的な部分の解明が必要とのべた上で、臨床経験から情報過剰選択仮説というものを提唱する。

米田氏の提唱する情報に焦点をあてた仮説とは

情報過剰選択仮説とは、

シングルフォーカス特性 シングルレイヤー思考特性 ハイコントラスト知覚特性

の3つの特性を中核に、5つの周辺特性を設定したものである。

まあ、詳しくは読んでいただくしかないが、 ここまででもかなり画期的な内容だ。

なぜアスペルガー者が独特の行動をとるのか?といったことが、この仮説を用いるとかなり解釈が可能になるからである。

周辺特性部分がまだうまくモデル化されていないのか、多少ぎくしゃくした部分もあり、この仮説に全面的には納得は出来ないものの米田氏の言う中核特性群の設定は間違っていないのではないだろうかと思った。

アスペルガーの陥りやすい誤信念という罠

そして、この本のもう一つのミソは生きづらさを作る後天的要因として「信念」というものを重要視しているという点である。

人間はさまざまな「信念」を持って生きているが、その「信念」があまりに現実離れしたものであったりと、社会適応上不都合な信念だったりすれば当然生きづらさを生じやすい。アスペルガー者は先に挙げた中核特性群のために、適応的でない信念をもちやすく、それが生きにくさの原因の大きな部分をなすと米田氏は言う。

多くの例を挙げての解説は説得力がある。

また、アスペルガー者にとってどういった支援(介入)が必要なのか?といった観点が随所に盛り込まれているのも非常に好感が持てた。

どうしてアスペルガー者が嫌われやすいのかといった事なども歯に衣着せずに書いてあるので、正直なところ、当事者が読むと「キツイ!」と思う部分も多いかもしれない。だがそれだけに役に立つ部分は多い。良薬口に苦しといったところである。

当事者・家族・支援者いずれにもおすすめ。 ひさびさのヒット!という感じである。



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【書籍】自閉症者の犯罪を防ぐための提言/浅見淳子

しばらく前に購入して斜め読みしただけでほっておいた本を一昨日通読した。
というわけで書評いってみる。


自閉症者の犯罪を防ぐための提言―刑事告訴した立場から
自閉症者の犯罪を防ぐための提言―刑事告訴した立場から浅見 淳子

花風社 2012-10
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この本はかつてネット上である自閉症者が起こした奇妙な事件に関する顛末とそれから得られた貴重な知恵に関する部分(後半)、そして自閉症児者を取り巻く言論環境の実情と「支援」の今のあり方が遵法教育をする上で妥当なものかという疑問を呈した部分(前半)からなる。


著者は自閉症関係の個性的な書籍を多く出している「花風社」の浅見淳子氏。前述の奇妙な事件の被害者でもある。


さて、アマゾンの書評コーナーをのぞいてみると、賛否両論思い切りわかれている。
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4907725876/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1


これほど評価が分かれる本も少ないだろう。
差別的で偏見や誤解に満ちたものとする書評と重要な視点であるという書評が混在する。

果たしてどちらが適切な評価なのか…と、私はワクワクしながら読み進んだ。


そして…読んでみて


極論はひとつも出てこなかった。

専門書ではないからデータに頼った書き方はしていない。
しかし論の進め方は極めて丁寧である。

取り立てて偏見を煽るような部分も見当たらない。

(自閉症者の奇妙な犯罪が近年目立つということは述べているが
自閉症者の犯罪率が高いなどとはタダの一言も書かれていない)

むしろ「偏見」が生じていく過程を分析した部分が興味深いし、自閉症者を社会の中で責任をもって生きていける存在として見ているところが好感が持てる。

この本のミソは自閉症児者が持ちがちな「誤信念」というものが時として「迷惑」や「触法リスク」となってしまう現象を実例をもってつぶさに解き明かしたことだろう。

自閉症者の触法リスクは定型者の触法リスクとは異質であるということがよくわかる。


ただこの本は反発する人が少なくないだろうとも思う。


理由は2つ。

・現在主流の支援団体等のやり方への批判が含まれること。
・自閉症者を責任のとれる存在と位置づけたこと。


親御さんにしてみれば、現在主流の支援団体のやり方を信奉している時には対峙する必要のなかった「我が子の迷惑リスク、触法リスクの低減」という課題がつきつけられる。つまり「社会の理解を!」と叫んでいるだけでは済まなくなるということである。

当事者にしても「誤信念」をもっていないかのセルフチェックという課題が出てくるし、様々な面で責任をとることを求められる。「社会の理解がないから悪い」という言い訳は通用しなくなる。


裏を返せばこの本は親なり当事者なりの「甘え」をいぶりだす踏み絵になるといった側面がある。
(ついでに言うなら、言葉尻に反応して感情に流された読み方をする人もいぶり出されると思う)


社会と折り合いをつけてやっていこう(そういう風に育てよう)としている人にとっては有用性が高い本だ。遵法教育だけでなく社会適応のためにも「誤信念・誤学習の防止」という視点は欠かせない、そういった視点を提供してくれる本だと思う。


多方面から反発が出るであろう問題にあえて切り込み、書籍化した著者の勇気に敬意を表したい。

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【書籍】「すみません」の国/榎本博明著

2月から整形外科で通っている某大学病院がターミナル駅に近いので、でかい本屋にも近い。

というわけで、帰りにしばしば本屋に寄ってくるのが楽しみになっているのだが、なかなかおもしろい本を見つけたので紹介する。


4532261570「すみません」の国 (日経プレミアシリーズ) (日経プレミアシリーズ 157)
榎本 博明
日本経済新聞出版社 2012-04-10

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何の本かというと、「空気」をキーにした日本文化論である。

日常の様々な場面から、政治的場面まで、日本を覆う「空気」とはどういったメカニズムで動いているのか?

また空気の醸成される過程はいかなる物か?
これを「すみません」をキーに読み解こうという本である。

多分、定型発達者にとって、この本は、「そうそう」、「うんうん」「確かにね~」とうなずきながら読む本であるのだと思う。

だが、ASD者にとっては、多分目から鱗の連続だと思う。

なにせ、意味不明の「空気」というものが、どういった過程を経て作られるのか、それがどういった方向性を作り出すのかなど、詳細に例を挙げて解説されているのだ。

ASD者にとって不可解に思える定型者のコミュニケーションの動きにはそれなりに意味がある。

その原則が解るだけでだいぶASD者のストレスが軽減できるのではないだろうか。


ってなわけで、ASD当事者にはお勧め度がかなり高い本である。






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