「RDI対人関係発達指導法」について その4

ちょっと間が空いたが「RDI対人関係発達指導法」という本についてもう一回だけ書くことにする。



RDI「対人関係発達指導法」


前の三回さんざけなしておいて言うのも何だが、この本はできれば当事者の人に是非読んで欲しい本なのだ。


というのは、


この本を読むと定型発達者の行動やその背景となる心理がよくわかるのである。


我々アスペルガー症候群当事者にとっては長年謎であった定型発達者の行動が手に取るようにわかる。


目から鱗だったものを一つあげておく。


印象形成(印象操作)について


(定型発達者は)
ほかの人々の自分に対する見方に影響を及ぼしたいという願望を持っている。そしてそれを操作することを6才前後までにおぼえ、他人に対し印象操作を行いはじめる


のだそうだ。


定型発達者が他人と接するとき、あるがままにあるのではなくて、
基本的に「振る舞う」が当たり前なんだ!


これはビックリである。



ほかにもある。


(定型発達者では)
どんなグループに所属するがアイデンティティに直結する。


信じられない!
しかしなるほどこうならば「居場所探し」が定型発達者にとって重要なわけだ。



さらに!


(定型発達者は)
「社会的参照」という機能を持っていて、常にその機能を使って他者の行動や言動を参照しながら行動しているという。




そうか、「参照すればいいんだ!」「参照してもいいんだ!」
である。



(我々アスペルガー当事者は参照機能は確かに弱い)



社会的参照機能などは訓練によって「ある程度なら」身につけられる。
これは身につけておくと確かに都合がよい。
(ずっとやりっ放しは無理だろうけど)




さて、例はまだあるのだがこのくらいにしておこう。




とにかくまあ、目から鱗の定型発達者の心理の山なのである。



これを読んでおけば
(ただし、前3回の記事に書いた落とし穴に気をつけて!)
定型発達者と接していくときの不可思議さ、そして時折襲う不愉快さがだいぶ軽減するのではないかと思う。



そういった意味で、読む価値のある本だと思った。



+++++

4回も書いちゃったよ。一冊の本の書評。
あ、これで終わりね。

次の予定は未定ですが、WAIS検査の話か私の仕事の話の予定。










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私と母の間にあった軋轢

みなさまこんにちは、狸穴猫です。
RDIについてまだ最後の稿を書いていないけど、今日はちょっと寄り道して昔の話を書きたくなりました。
私と親との軋轢の話です。
この手のネタでフラッシュバックが起こりそうな人は待避してください。


+++++



私の母は心配性だった。


小学校の頃、当時「いじめ」という言葉がなかったけど、確かに私は「いじめ」に遭っていた。
今思うに、私がアスペルガー的特性がいじめの標的になってしまっていたように思う。


それはともかく毎日泣いてかえる日々が続いた。
小4だった。


泣いて家にたどり着いた私を見て、母は


「なんであんたばっかりいじめられるのか?」
「あんたも悪いところがあるんじゃないか?」
「あんたが強情なんじゃないのか?」


そういっていつも泣いている私を前にオイオイ泣き始めた。


泣かれてしまうと、こっちは冷める。
涙が自然と引いてしまう。
「この人に何を言っても無駄だ、私を泣いて責めることはあっても、決して味方になってはくれない」
そう思うと悲しくなった。


そんな日々が続いたある日、学校の帰りがけに決意した。
「もうあの人(母のこと)の前で泣くまい、心配させるようなことは伝えるまい」と。



相談事はみなこっそり父にした。
父はいつも私の味方だったから。


それから28年ほど、私は母の前で本音を吐くことはなかった。
15年前、父が他界してからも変わらなかった。


母に何か聞かれても「大丈夫」とだけ応えるのが常になっていた。


しかし転機が訪れた。


元夫からのDVが酷く、離婚を決意した私は母にやっと窮状を伝えた。
しかし1人では伝えることができず、当時同僚だった今の夫が母を説得してくれた。


「何でもっと早く言わなかったの?」
母は昔と同じように涙を流しながらそういった。


私にはそれがものすごく腹が立った。


離婚からしばらくのあいだ。
何かのたびに残してきた息子の心配をする母の言動が私のカンにさわった。


私は母を責めた。


話は全て昔へ向いていった。


「心配心配って、私のことは心配しないくせに!」
「あの頃、わかってくれなかったじゃない!」
「いつも責めるばかりで味方になってはくれなかったじゃない!」
「だから私は何も言わなくなったのよ!」


いつも泣きながらそう訴えてしまう。
28年前の思いがフラッシュバックのようにこみ上げてきて母を責めてしまう。


頭ではわかっている。


別に悪い人じゃない。ただ心配性なだけだ。
私がどう思うかよりも自分の気持ちの方がこみ上げてきてしまう人なんだ。


2年ほど、それを幾たびか繰り返し、母も泣き、私も泣いた。


はき出すものをはき出し尽くしたのか、
私は徐々に落ち着いていった。


今になって思う。
責められる怖さから母と距離を置こうとしていた自分がいたのだった。
母のむき出しの「感情」に責められるのが怖かった。


それはアスペルガーゆえのことだったかも知れない。
幼かったからうまく伝えられなかった部分もあるかもしれない。
ずっと自分の思いを伝えるのが怖かった。


しかし私はずっと母にわかって欲しかったのだ。


母には私を責めているという意識はない。
それが辛かった。



私はやっと母に伝えられる言葉を少しだけ持つに至った。
もう母に隠し事はしなくてすむだろう。



ただそれでも時折こんなことを考えてしまう。


いじめがなければ、私と母の間にこんな軋轢は生じなかったのかもしれない。
もし当時アスペルガー症候群という私の障害がわかっていたら少しは違ったのかもしれない、と。



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療養日記2007-06-14

RDIについてつづきを書く前に忘れないうちに療養日記をアップしておこう。




はっきり言ってこの1ヶ月、調子がよかった。


まあ、家事になかなか手が回らないのは相変わらずだが午前中起きていられるようになっている。


息子に「眠りトド」と言われずに済むようになった。
(「トド」とは言われるがまあこれは仕方あるまい…減量せねば)


1年半ほったらかしになっていたホームページの手直し作業だけでなく、やろうやろうと思いながらできずにいた新サイトの作成まで、ボチボチではあるがやっていられるのだからすごい変化である。


まったく、エビリファイさまさまである。


さてそんなこんなで今週初め、ひと月ぶりに外来に行ってきたのだが、当然調子がよかったので変薬はなし。


お薬一覧

アモキサン75ミリ
エビリファイ3ミリ(朝)
リスパダール1ミリ(夕)
ジェイゾロフト50ミリ
トレドミン50ミリ
ハルシオン0.25ミリ
(1日量)
頓服としてセルシン5ミリ


来週は広汎性発達障害のグループワークの事前準備として、WAIS検査を受けることになっている。

どんな結果が出るんだろう?
なんだかちょっと今からワクワクである。


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「RDI対人関係発達指導法」について その3

しつこく「自閉症・アスペルガー症候群RDI対人関係発達指導法」について書いてしまう。



RDI「対人関係発達指導法」



正直なところ、この方法が日本国内で普及するかはわからないし、もしそうだとしてもだいぶ先のはなしだろうから当座、この方法の悪影響は出ないだろう。


しかし、現時点でこの本を読んでいて非常に危惧をおぼえることがある。


それはこの本を高機能自閉症・アスペルガー症候群の当事者が読んだ場合の話だ。


この本には発達段階を大きく6つの段階、細かく分けると24段階に分けている。それぞれ「○○ができること」「○○を楽しめること」などとかなり具体的な段階表記がなされている。

そこで、自分に当てはめてみて


「自分の発達段階はレベル○どまりだ!」


と、無用な(少なくともわたしは無用だと思う!)劣等感をもつ可能性が否定できないだろう。


疑ってかかるということをせず、わりと本などに書いてあることを鵜呑みにしてしまうタイプの高機能自閉症・アスペルガー症候群当事者は多い。そう「真に受けてしまいやすい」のだ。専門書なら尚更だろう。


(そうだ、私みたいにひねて考える人間は多くない。大抵の自閉者は非常に素直なのだ。)



特に、二次障害等で自己評価が低くなってしまっている場合、劣等感をもつ危険性はより高くなるだろう。


この「RDI人間関係発達指導法」を信奉した専門家(医師・心理士等)が当事者に大して無用に劣等感を煽ってしまう危険性も否定できない。



私はそれを危惧する。


+++


さて、この際だから予告しちゃう。
この本(指導法)に関してもう一回書く予定。



(おまけだが、2/3年齢説などというものもあるらしい。これも疑ってかかった方がいいように思う。 出所は不明…「発達障害メモ」というブログのとある記事にあった)

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「RDI対人関係発達指導法」について再び

またまた「自閉症・アスペルガー症候群RDI対人関係発達指導法」について書いてしまう。


RDI「対人関係発達指導法」



この指導法の大前提は


「自閉症・アスペルガー症候群の人間も定型発達者と同様のステップを踏んで対人関係を発達させる」


つまり


「自閉症者・アスペルガー症候群者では対人関係に関して発達が遅いだけである。」という前提をおいているのである。


これは監修者後書きに明記されているので、この本を手に取った人は是非チェックして欲しい。


ところがだ!


この本のp120には自閉症者・アスペルガー症候群者には「対人関係に対する動機付けの障害」があると書かれている。


自閉症者では人に対する興味が優先されず、ものに対する興味が優先されてしまうので指導を行う際に動機(=モチベーション)の面で障壁となってくるというのだ。


モチベーションが低い…



それは脳の質的違いなのではないだろうか。
(もちろんこの際のモチベーションというのは「定型発達者的対人関係」に対するものだ!)


対人関係に関するモチベーションの低さがあるという時点で「発達が遅いだけ」という大前提は崩れるのではないだろうか。



この指導法の大いなる矛盾点だ。



現在、脳科学の発展に伴い、脳のPET画像などで定型発達者と自閉症者・アスペルガー症候群者では明らかに脳の活動部位が違うということがわかってきている。


それなのにRDIは自閉症者・アスペルガー症候群者の対人関係に関して、「単に発達が遅いだけ」という前提で開発されている。


私には脳科学を無視しているように思えてならない。


と、同時に自閉症者・アスペルガー症候群者には独特の人間関係があるように思うのだ。


我が家のような家中アスペルガー家庭ではそれなりのコミュニケーションが成立している。但しそれは定型発達者のそれでないだけのように思う。

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