コメント欄で
「いじめ問題」に関する反響が多かったので、これは紹介する方がいいかなと、読んだ本のうち、特におすすめの本を紹介する。
ま、考えてみれば
「アスペルガー症候群児者」はとかくいじめられやすい。…となれば、過去のこと、現在のこと、いずれにせよ、いじめ問題を考えるのは避けて通れない。
さて…
私は小説以外で一人の著者の本を複数冊買うことは多くない。
特に心理や社会系の本はその傾向が強い。
が、今回は超珍しいことに、同じ著者の本を
3冊も購入してしまった。
アマゾンの書評を見て購入に踏み切ったのだが、3冊とも
「大当たり」だった。
シリーズ的な書籍群なので、まとめて紹介する。
=============
◆いじめの構造 内藤朝雄 著内藤氏のいじめ論をコンパクト、かつわかりやすくまとめた本である。
後述する「いじめの社会理論」の普及版といった感じの本だ。
「中間集団全体主義」がいじめの主原因であるとし、その成因について心理学的な面からのアプローチが、ふんだんな図解やいじめの実例(かなりきわどい例が多い)と共に解説されているので、比較的容易に理解できるのではと思う。
「いじめっ子が集団を離れればただの人になる」メカニズムは目から鱗である。
従来の通俗的ないじめに関する解釈をはるかに凌駕する、質の高い「いじめのシステム論」である。
特に学校関係者には是非読んで欲しい一冊である。
また、現在お子さんの被いじめに悩む親御さんにもおすすめである。
この本があれば自信をもって「あなたが悪いんじゃない」とお子さんに言ってあげることができると思う。
◆いじめの直し方 内藤朝雄 荻上チキ 著この本ののタイトルに着目して欲しい。
「治す」ではなくて
「直す」であるところ。
異常事態を正常化するという観点でいじめを捉えている事をタイトルの漢字1文字で表現している。
この本は
小学校中学年から大人まで読める「いじめ学」のもっとも簡単な本である。
イラストを豊富に使い、直感的に理解できるような構成になっている。
細かいことは省いて、「集団のあり方」が「いじめの原因」となっているということをベースに、
どのようにいじめが作られるかと、なぜ逃げにくいのか?そして、いじめを受ける側にはなんの責もないということを、簡潔にわかりやすく説明してある。
いざというときに役に立つ「いじめられた記録」の付け方については、サンプルシートが付いているので、すぐ使える。
ま、正直なところ、「対策」についてはやや弱い面があるのは否めないが、
「いじめられるのはあなたのせいじゃない」と言ってくれる大人がいるということが
形になった書籍であるので、いじめを受けている児童・生徒の「精神的支柱」となりうる本だと思う。
過去の被いじめ体験に「言葉」を与えたいという人にもお勧め。
正直、子どもがいる家庭、
一家に一冊常備しておいて欲しいくらいの本である。
学校という環境に子どもを置くということがどういう事なのか?負の面を知っておく必要はあるだろうし、いざという時に精神的杖となるという意味で、置き薬以上の価値はあるだろう。
◆いじめの社会理論 内藤朝雄 著一連のいじめの構造の本の中で一番詳しい本である。
従来のいじめ論のどこが矛盾なのかを鋭く突き、さらに、いじめの構造をこれでもかというくらいに詳しく、「全能化モデル」「中間集団全体主義」というキーを中心にして解説してある。例によって実例も豊富である。
まさに「いじめ学」なのである。
また、この本は単に「いじめ」の研究にとどまらず、「いじめ研究」で用いた手法で、一般のハラスメント類の発生機序や、さらに人間の絆というものの成立までをどんどん分析していく。
さらに、集団心理の力学を図式化し、マクロ社会学とミクロの心理学を独自の概念でつなげることによって、さまざまな社会構造から政策立案を考えるという特徴的かつちょっと政治的な方向性の章もある。
いじめ研究に始まって「社会」へアプローチするという感じの一番強い本であるだけに、そのダイナミックな展開に面白さは一番という感じだ。
最初に挙げた「いじめの構造」では理論面がまだ物足りないという人も満足がいくだろう。
但し、非常に面白い本ではあるが…この本、表現といい、各章の繋がりといい、なかなか
難解である。(読み始めてから読み終わるまで3日もかかってしまった)。だからさっくり読みたいという方にはあまりおすすめできないということも書き添えておこう。(本も2300円とあまり安くはないし…)
理論派のお父さん、そして、会社等でのハラスメントも扱えることから、あらゆる管理職に就いている方におすすめ。もちろん、学校の管理職には是非読んで欲しい本である。
==================
さて、以上3冊紹介したが、いじめ問題の実際と付き合わせると、学校において、内藤氏の言う「中間集団全体主義」が時代のどこで強化されたのかという疑問がわいてくる。
この点はまだ研究の余地があるだろう。
というわけで、狸穴猫は現在、戦後の教育史についての本をガサゴソとあさっているのであった。

にほんブログ村
発達障害ランキング
↑ブログランキング参加してます。↑
応援の1日1クリックを
おすすめ度高し!
できればその
…
ぼちっと↑
お一つ
-★お知らせ★-
第12回アスパラガスの会開催は 2月26日(土)です、
テーマ:「生活の中での工夫」 定員:24名 (残枠8席/2/14現在)
参加登録受付中です。(~2/15)