発達障害児の子育てをお菓子づくりから考える

最近お菓子を作ることが多くなった。

シフォンケーキ/カット

まあ、デザート系のものや小豆系ものはそれなりに作っていたが、タヌキ亭主が「クッキー焼いてくれ~」といってみたり、娘が「バレンタインの友チョコ作りたい!」といってみたり、というのがきっかけで納戸からひとつふたつと菓子作りの道具を引っ張り出しては洋菓子作りをしている。

慢性寝不足生活から足を洗ったので多少気力に余裕がてきたのも大きい(そのことについてはもうちょっと後にまとめて記事にするつもり)。

まあ最近はお菓子を作るのも楽になった。スーパーでもそこそこ材料が揃うし、百均ではケーキやチョコレートの型やトッピング材料やラッピング資材もたくさん売っていてバレンタイン前ともなるとコーナーもかなり充実する。

とはいえ、それでうまいことケーキがが焼けるかというと実はかなり厳しいと思っている。

 

お菓子作りが嫌いにならないコツ

よくスーパーで特売になる日清製粉の「フラワー」や日本製粉の「ハート」といった小麦粉を使って素人が乳化剤等の品質改良材を全く使わずに美味しいお菓子を作ろうというのは実はかなり無茶である。

ふくらむ系のお菓子なら少なくともバイオレット。できればスーパーバイオレット使うとふくらみ方がぜんぜん違う。

小麦粉だって産地や品種や挽き方なんかでかなり種類があるのだが、スーパーの店頭の小麦粉ラインナップがとっても寂しい状況だから知らない人も多いのかもしれない。結構な種類の菓子向き小麦粉が業務用中心にではあるが販売されているのだ(最近は小分け販売も結構されている)。

ちょっとは値が張るものの、市販のバカ高いミックス粉買うくらいならお菓子に向いた小麦粉を買ってしまったほうがが断然オトク、そして残念な出来上がりになることも格段に減る。

出来よりも「手作り」ということに価値を見いだすのも悪くはないが、バレンタイン近辺の時期は、無茶をしたあげく残念な結果になって苦手感をつのらせる人が出やすい時期だなあとは思う。

同じように作っても小麦粉ひとつで出来上がりにかなりの差が出る。

別に小麦粉が悪いのではない。日清のフラワーやニップンのハートはお値段手頃で汎用性が高い小麦粉である。肉や魚を焼くときに表面にまぶしたり、ホワイトソースを作ったり、ホットケーキや鬼饅頭を作ったりするのであれば何の不都合もないだろう。

ただ、ケーキやクッキーを作るとなるとちと合わないというだけだ。

素材の特性を知り、それを活かせる範囲で使うことは重要である。

小学校高学年くらいの女の子はお菓子作りにチャレンジする子が増えてくる。そこで

「知らずに無茶をする→残念な結果になる→苦手感をつのらせる」

となってしまうのはとても残念だと思う。

私の子どもの頃なら「ケーキ作りたい!」と思ったところで家にオーブンがない家庭も多く、こんなことで苦手感の生じようもなかった。何となくまねごと出来れば万々歳だった。

しかし時は移り変わる。道具も材料も簡単に手に入る時代だからこそ、素材を知ること、知ろうとすることが重要になった感はある。

 

発達障害児の子育てとお菓子作り

 

この「知らずに無茶をする→残念な結果→苦手感をつのらせる」という構造、お菓子づくりの場面以外でもよくあることだ。

まあ、ものがお菓子であるなら食わなくても生きていける、そして街にでれば上等な品も売られているのでどうしても食べたければ買えば済む。

避けて通れるものであるなら、やめておこうというのもひとつの選択である。人生そんなに無限じゃない。

 

だが、避けて通れないこと、つまり生活上必須のことはなかなかそうはいかない。

最たるものが子育てだろう。

発達障害児の育児というのは避けて通れないこと以外は難易度の高いお菓子作りと似ている気がする。

多くの親御さんが悩む

「なぜ一般の育児書に出てくる成長パターンとかけ離れているの?」

というのは、お菓子作りにおける

「なんでレシピ通り、手順通りに丁寧にやってるのにうまくできないの?」

というのとかなり似ている気がする。

そしてお菓子の場合だと「本にある手順以外に何かコツがあるのか?」あたりはわりと検討する人が多いのだが、「その素材はそのレシピに向いているのか?」「そのレシピ自体がかなり無茶では?」あたりをはずして沈没する人が出てくるわけだ。

 

さて、発達障害時の育児について考えてみよう。

  • その療育アプローチはうちの子に向いているのか?
  • うちの子のどこからどこまでが特性なのか?性格なのか?
  • その療育アプローチは本当に効果が期待できるものなのか?

など、いろいろ親として考えることは多い。

どっちが素材でどっちがお菓子か?はたまたこの場合の成果とは?とかいうことはまあいろんなとり方がありうるが、要は「見きわめの問題」「マッチングの問題」がかなり大きい。

ひとつのアプローチ方法に関して「何とかうまくいかないか?」と粘り強くトライすることを否定する気はない。そういったたゆまぬ歩みが必要なことももちろんある。

ただ、もし「どうも子育てへの意欲が低下して...」とか「なんだか療育疲れっぽい...」と思うことが多いのであれば、ちょいと視点を変えてみることも必要ではないだろうか?

「知らずに無茶をしている」というパターンに陥ってる場合もあるかもしれない。

 

重大な誤学習を放置したままSSTやっても形だけになりやすいだろうし、うまく姿勢がとれないのを放置したまま筋トレしても効果は出にくいだろう。

睡眠の質が悪い状態では何やってもぼーっとしやすくて当然だろう。

 

 

発達障害児との付き合い方も育児のコツも療育アプローチもいろんな知恵が集積されてきた。

療育アプローチのいろいろについて、類型と特徴を私なりにまとめた記事はこちら

 

どういう場合にどういうアプローチが向くのか、どういった場合には避けた方がいいのか?よくよく観察し、タイミングも含めて検討し、試行錯誤をしていく(そりゃもちろん危険性のない範囲でだが)ことで道が開けてくることは多いのではないかと思う。

 

ガレット向けの小麦粉なら、フワフワのスポンジケーキを作ることを目指すよりも極上のガレットつくることを目指すして努力するほうがはるかに楽だ。

そしてうまくできればみんな笑顔になれる。

 

=おまけ============

もちろん、レシピ本を見るだけ...でないのが前提ですよw。

=さらにおまけ===============

愛用のスポンジケーキやシフォンケーキ用がふくらみやすい小麦粉はこれ。特宝笠(とく たからがさ)という薄力粉です。

 

 




 

 

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ソーシャルスキルと料理のコツと試行錯誤

久しぶりにパンを焼いてみた。



そして、パンを作りながらさじ加減というものについて考えていた。




パンやお菓子に関して、うまく作るためのアドバイスとして「レシピ通りに」というのが非常に多い。


だが、レシピを開発する方は既存のレシピ通りにやっていないのもまた確かである。




実をいうと私はパンもお菓子も結構いい加減に作るクチだ。




そのために何をするかというと、まずレシピ通りに何度かつくり、毎回ある程度まともに再現できる状態になってから、レシピを変化させてつくり、配合の限界点を見極める。



卵三個(正味150g)でスポンジケーキを作るとき、果たして粉の量はどこまで抑えられるか?そのためにどんな条件が必要か?とか…まあいろいろ試した。



まあ、結論からいうと素人が助剤なしでやるには薄力粉60gが限界だろう、そしてその限界を実現させるには卵の安定した泡立ちと生地の柔軟性のために砂糖は90g以下に減らしてはいけないようだということがわかったのだが、それまでにたぶんスポンジを20~30台以上は焼いただろう。



ここまでやると薄力粉70~110g-砂糖90~110gくらいなら、配合を適当にやってもそれなりのスポンジが焼けることがわかり、あとは気分でいいかげんにスポンジを焼くことができる。




レシピ通りというのはある意味安全ではある。だが、レシピ通りにしかできない。




どの範囲なら大丈夫か?というのをいろんな要素を変えて試行錯誤していくことによって脳みそに突っ込んでいくというのはなにも料理の話だけではない。




「もうちょっとうまい方法ないかな?」


「このセンス取り入れられないかな?」


「ここをこうしてみたら?」




あれこれ考え、試行錯誤するのは実は非常に日常的な行為である。



お金の使い方、化粧の方法、家具の配置、部屋の模様替え、そうじや洗濯の工夫…何も試行錯誤したことがないという人は少ないだろう。




多くの試行錯誤をすれば当然「イマイチ」というレベルの失敗の発生も多くなる。




「あちゃー、イマイチ!」



と思ったら「●●というやり方はイマイチの結果を生む」という新たに入手した情報を元に別の手を考えるというのが一般的ではないだろうか。




試行錯誤が生命・身体の危険につながらないための最低限の知恵をつけておくことは必要だし、イマイチの結果が少なくするようにあらかじめある程度の情報収集してリスクを低くしておくのもいいだろう。



とはいえ情報収集だけで試行錯誤をしなければ何も生み出さない。




レシピ本を読んだだけで「さじ加減」ができると思う人がいたとしたらと超絶抱腹絶倒レベルの自信過剰だろう。





ソーシャルスキルの獲得(そのための療育も含め)も構造は全く同じだろう。さじ加減ができるようになるには試行錯誤が必要だ。




強いて違いを挙げるとするなら、人との関わりは非常に変化が多いということだろうか。同じ人に会うにしても自分の気分も相手の気分も前回と同じ状態ということはないのだから。





最近、発達障害者、発達障害児の親御さん向けとおぼしきソーシャルスキルの本が増えてきた。



そしてそれらは



「こういう場合」→「こういう対応」



というマニュアル型のものが非常に多い。これらはレシピ型ということもできる。



別にこういう形のものがすべて悪いというわけではない。




既成のレシピなのだから、試行錯誤して取捨選択するなり調整幅を見極めてアレンジして使えばいいだけのことだ。




だが、「いろいろな方法を試しているのに今ひとつ成果が…」という声はよく耳にするし、「私に(うちの子に)使える本がない」と嘆く声もしばしば耳にする。




ベストのレシピを…という気持ちはわからないでもないが、待っている間に年月は経つ。




正直なところベターなアレンジを見つけるために重大リスクだけ避けてどんどん試行錯誤するほうが早道ではないかと思うことは多い。




試行錯誤すればもれなく大量の失敗がついてくるが、その失敗を怖れすぎると、試行錯誤をし損なうという失敗がもれなくついてくる。




なにやら禅問答のようである。




…などということをパンを作りながら考えていたのだが、昨日は台所の室温が予想以上に低く、最終発酵の加温が準備していた方法(余熱中のオーブン上を利用)で思うようにできなかったので途中で急遽加温方法を変更し…というすったもんだの末に予定より30分遅れで完成したのがしたの下のパンである。



pan2016.jpg




プレーンな系統のパンをとーっても久しぶり(10年くらいつくってないかも)なので作るのが楽な小麦粉(ゴールデンヨット)に頼りはしたが、結構いい出来だった。何より焼きたてのパンは香りが最高!




終わりよければすべてよし!




 


 


↓ゴールデンヨット:グルテン量がとても多いので膨らみよく作りやすい強力粉。













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