私もまた然りであった。
私は大学に2度入っている。
が、出たのは1回だけだ。
要は1回目は中退。
その中退のきっかけとなる一件のことを書いてみよう。
さて、はじまりはじまり。
私が大学に入学したその年はどういうわけだか「教養の化学」の教授が不在だった。
薬学部の教養の化学の教授ポストなんてのは、やる人がいない。
典型的な左遷コースだからだ。
前の教授が退官したもののやる人がいなくて教授不在のまま新学期を迎えていた。
となると当然授業はない!
こんなことあってはいけないことだが、「教授が決まってからはじめる」ということになっていたらしく、半期の間、授業がなかった。
そして入学した年の後期、さすがに教授も決まり、授業が始まった。
本来通年の授業を半期でやろうというのだ、つまり週に2限。
教授は出席をきちんととる人だった。それがことの発端だった。
10月、すなわち後期に入り、派手な風邪をひいた。
私にとって風邪は大敵である。なぜなら思いきり寝こむからだ。
それで2日ほどその授業を休んだ。
別に診断書もらって提出するでもなく、とにかく休んだ。
それがまずはまずかった。
いーや、ふつうならまずいはずはない。
あとで適当に出席すればいいことだ。
だが、11月に入り、事態は一変した。
盲腸憩室炎という、虫垂炎よりちと重い病になってしまったのだ。
思えば、数週間、右の腹の下の方がしくしく痛んでいたが、いつものことだとほっておいた。…が、11月のある日、その痛みはどんどん増幅し、油汗をかく始末。
明け方に救急病院の門を叩き、即座に入院、同意書を書いてくれる親が到着し次第手術ということになり、ベッドに横たわり、痛みにうなるハメになった。
入院一週間くらいとタカをくくっていたが、入院3週間、自宅療養1週間を余儀なくされた。
さらに悪いことにやっと体力が回復仕掛けたところでまた風邪をひいた。
1週間追加で寝こむハメに…。
ここまで来ればわかるだろう。
出席が足りない!
出席をとらない教官の授業はいいとして、そうでないところは問題である。
あっちこっちの研究室まわりをして、事情を説明し、レポート等でなんとかしてもらったり、特別に実習をさせてもらったりして、殆どの教科は何とか試験を受けさせてもらえることになった。
ところがである。
「教養化学」の教授室のドアをたたき、事情を説明したが、
入院以前に2回ほど休んだことを理由に、こうきた。
「試験、受けさせられませんねえ」
さらに
「あらためて授業を受けて下さい」
薬学部の授業カリキュラムは余裕がない。
4年に上がる際に関門があるのだが、2、3年で教養化学を受ける余裕はないのだ。
当然私はお願いする。
「そこをなんとか…!!!」
だが、教授は頑としてゆずらない。
「わかりました、そのようにさせていただきます。」
年度初めから授業があればこんなことには…とも思ったが、どうしようもない。
1年の12月に2年後の留年が決まった瞬間だった。
さて、1年の後期試験、当然、教養化学の試験は受けに行かなかった
受ける権利がないと思っていたのだから当然だ。
しかし、試験期間後、思いもよらぬ呼びだしを食らった。
そうだ、試験を受けに行かなかった教養化学の教授からである。
なんだぁ?と思って行くと、教授はいたくご立腹の様子。
「何で試験を受けなかったんだね」
私は耳を疑った。
留年して授業を受けろと言った張本人が、その逆のことを言っている。
私は腹を立てた。
「先生が試験を受けさせないとおっしゃったからです」
「だからといって試験を受けないとは何事だ」
私は教授の矛盾に満ちた言動にさらに思いきり腹が立ってきた。
「だから、先生が受けさせないとおっしゃったじゃないですか」
沈黙が流れる。
にらみ合い状態になる。
「もう結構です、留年して改めて授業を受けさせていただきますから」
そう言って私は教授室をあとにした。
2年後の留年が今度こそ本当に決まった瞬間だ。
1年のうちに留年が決まって、やる気の起きようわけがない。
私はだんだんと大学から足が遠のき、実習をのぞき、半不登校状態になった。
勉強する意欲も減退し、鬱状態になっていた。
そして、留年し、中退するに至った。
………
あれから20年もたって、アスペルガーであるとの診断を受けてから、ようやくあの時の教授の矛盾ある言動がわかった。
もっと日参してお願いすればよかったのだ。
「受けさせない」と言われても試験を受けに行けばよかったのだ!
呼びだしのあとでも追試のお願いをすればよかったのだ!
しかし私は教授の話す言葉の言外の意味が全くわからずに私は教授にただただ腹を立てたのだった。
もちろん、その教授もあまり性格がいいとは言えないかもしれないが、実は留年させる気まではなかったのだということが、2年ほど前にやっとわかった。
これが私の人生最大級のアスペルガー的失敗である。
これから大学に入る諸君には、ぜひとも同じ轍は踏まないでほしい。
それにしても、気がつくのに20年かかるとは…
しかし、かくも診断とはありがたいものだ。
<分析編へ続く>


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