【書籍】大人のアスペルガー症候群

とうふさんのところ(アスペルガー社会人のブログ)で紹介されていたので買ってみた。


大人のアスペルガー症候群 (こころライブラリー イラスト版)大人のアスペルガー症候群 (こころライブラリー イラスト版)
(2008/08/30)
不明

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なるほど、大人のアスペルガー症候群に踏み込んだ書籍はこれが本邦はじめてだろう。
そういう面では画期的な本とはいえるかもしれない。


大人のアスペルガー者に対して周囲がもつ印象や、本人のぶち当たるコミュニケーション上の壁、仕事をしていく上での困難などに関して、かなり詳しく解説してある。


が!


とうふさんのとこでは評判がいいようであるが、
私には当事者にとって良書であるとは残念ながら思えなかった。


なぜなら、アスペルガー症候群者が

「こうやっって周囲から浮いていく」
「こうやって仕事面でうまくいかなくなりやすい」
「こうやって二次障害を起こしていく」

というようなことのメカニズムについてはよく解説してある本だとは思う。

ぶっちゃけていえば、


アスペルガー者が定型社会でドジを踏んで転がり落ちていく過程の分析は的確だ。


しかし、肝心の

「どうしたらうまく立ち回れるのか」
どうしたら人間関係がうまくいくのか」
「どうしたら二次障害を起こさずに済むのか」


などについては、言っちゃあ何だが、「お粗末」としかいいようがない。


「特性に関する理解が進めば」
「誤解をなくしていけば」
「環境を整えれば」


というようなことしか書いていない。

また、トラブル対策に関しても同様にお粗末だ。

一部紹介すると、

相手を無意識に怒らせてしまうことがあるということに関して、


「人の態度の変化を感じ取り対処する能力がつけば…」


というのが対策としてあげられている。


感じ取れないからアスペルガーなんだよ!


と、言いたくなった。
(だって、そこんとこは脳機能の問題なんだから)



ときどき上から目線が鼻につくというのもある。



というわけで、あくまでこの本は、支援者や、アスペルガーの部下をもつ上司、アスペルガー者を雇用する雇用者向けの本だと考えた方がいいだろうと私は思う。


「悪気はないのさ」、「理解しようとしているのさ」とガッチリ思わないと、読んでいて辛くなるかもしれない。


特に思春期の当事者や、鬱ぎみの当事者の方は、落ち込むネタ満載なので、あまりこの本を読まない方がいいかもしれない。とさえ思ってしまった。


しかし、ま、これをネタにしばらく定型発達者分析の記事がわんさと書けそうだなという点では私にとっては価値がある本であった。


つまり…定型発達者目線満載の本なのである。




と、いうところで、良書か悪書か評価は思いきり分かれる本だと思う。






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コメント

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取り上げていただき有難うございました
非常に参考になる書評だと思いましたので、リンクさせて頂きました。有難うございました。
アスペルガーのことをある程度知り尽くした当事者からみると、狸穴猫さんのような意見が出てくる本だと思います。(自分も当事者の方からのコメントレスに、その方にとっては既知の事実が多いだろうと書きました。)ただ、アスペルガーのことを知ったばかりの当事者からみると、自分の行動特性を整理して理解出来る本ではないか、というのが個人的な意見です。
立場、勉強の度合いにより色々な書評がつく本であろう本ですね。取り上げていただき有難うございました。
これは私も経験がありますね。

私は広汎性発達障害の中でも「特定不能型」
(非定型自閉症ともいう)に分類され、さらに
「高機能」であると診断されています。

そんな私に対する(発達障害の専門家であ
るはずの)臨床心理士の所見は発達障害に
対する理解が根本的に欠如したもので呆れ
てしまいました。

まさにこの本と同じで本来「○○という対応を
行えば××できるようになるだろう」という形で
語られるはずの事を「対応としては××できる
ようになれば・・・」などと言っていたりするの
です。

卵を割るという対応を行った結果オムレツが
出来るという結果があるとします。

この場合対応を聞かれれば「対応としては
まず卵を割って・・・」と答えるのが正常な
答えです。

ところが私の担当の臨床心理士は「対応と
してはオムレツを作れれば・・・」などと言っ
ているのです。

まさに

「だからこっちが求めてるのはそのオム
レツを作るのにまずどうやったらいいか、
その対応策なんだよ!」

となる訳です。

対応を聞いてこんな馬鹿な返事が返ってくれ
ば私に限らず誰でも呆れてしまうはずです。

しかしプロであるはずの臨床心理士が自分
がどれだけ馬鹿な事を言っているのか全く気
が付かない。

それどころか適切な対応策を述べていると
さえ思っているのです。

この事で私はどんな権威のある医師であ
ろうが健常者である以上は自閉症を初めと
した発達障害を理解する事は不可能なの
だとはっきり理解しました。

ですからこの本も健常者が読めば「アスペル
ガー症候群を分かったつもりになれる」本な
のでしょう。

そして、そこに書かれている対応策は健常者
の立場で書かれたもので当事者にとっては
何の役にも立たない呆れるしかない内容の
ものなのでしょう。

アスペルガー症候群を外から観察して分かっ
たつもりになった健常者が書けばそうなるのも
当然の事です。

健常者に方には「健常者は外から眺めて
ああかも知れないこうかも知れないと推測
は出来ても実際に中で何が起こっているの
か、その体感を理解するのは不可能なのだ。
だからこの本に書かれている内容も真実で
はなく健常者の個人的感想に過ぎないんだ」
という事を理解したうえで本を読んで欲しい
ですね。

親や上司がこの本を読んで「アスペルガー
症候群とはこんなものだ」と「分かったつもり」
になってしまって

「この本には対応として××できればと
書かれている。
だから今後××ができるようになるよう
に心がけろ」

などと見当違いの事を言い出されてこの
本を渡されるという事が当事者にとって
は一番迷惑な話であるはずですから。

また10代の子供が読んだ場合あくまで
健常者の基準と視点で書かれたものに
過ぎない内容を真実だと誤解してしまう
恐れもありますから親が当事者の子供
にこの本を読ませる場合には

「健常者から見たらこう見えるという
のが書かれているだけであって、決し
て君の真実がここに書かれている訳
じゃないんだよ」

と事前に説明してあげる必要もあるでしょうね。
もっと酷い本があるので…
こんばんは。
狸穴猫さんの書評大変面白くて、読み応えありました。

佐々木正美先生の大人のアスペルガー本は私も最近読んだんですが(買わなかった)、狸穴猫さんの指摘点はまったくその通りだと思います。

しかし、該当の本は、当事者には物足りない点があるとはいえ、それでもアスペルガー本の中では良いほうだなぁと思ってました。
その本とは比べ物にならないほど、もっとずっと酷い読後感のアスペルガー本を何冊も読んだことがあるからです。

私は、発達障害専門家が書いた「アスペルガーは相手の心がわかりません」「アスペルガーは就職できません」「アスペルガーは学歴をつけないで特別支援学校に行って障害者就労しましょう」「アスペルガーは恋愛も結婚もできません」「アスペルガーは犯罪者になります」「発達障害者の中で一番悲惨なのがアスペルガーです」みたいな内容の本を読んで、ひどく落ち込んだことがあったんですが、それらに比べたらずっと良いほうだと思ってしまいました。
他の本が酷すぎるんですよね。

多くのアスペルガー本って、「定型発達者から見たら、アスペルガーは、劣ってることだらけなんだよ」「アスペルガー当事者はこんなに苦しい人生を送ってきたんです」という内容の本が殆どで、「じゃあ、どうしたらいいの?」ってことは「理解と支援を求めましょう」「障害者就労しましょう」「早期診断、早期療育しましょう」みたいなことしか書いてないですよねぇ。

アメリカ人が日本人を観察して書いた「ニッポンジンはこんなにも劣ってる。ニッポンジンって変ですねぇ~」って内容の本や、日本人が書いた「日本人の私達はこんなに劣っているんです」って内容の本を、日本人の私がどんなにたくさん読んでも、自虐的な気分になれるだけで、アメリカ人の理解にも日本人の向上にも役に立たないように、殆どのアスペルガー本は、当事者にとって役に立てるのが難しいと思います。
定型発達者が…
定型目線で『こうしろ、ああしろ』って書くからお粗末になっちゃうんでしょうね(汗)。

『発達障害者の発達障害者による発達障害者の為のバイブル本』なんて誰か書いてくれへんかなぁ?ってこの記事みて思いました。
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
私が自分の体感から言える事は、アスペル
ガー症候群などの発達障害がある人間が
健常者との間に起こす事となる問題や反応
はその状態であれば「正常」なものだという
事です。

例えば人の100倍の皮膚感覚を持っている
子供がいるとします。

そして他の子供が泥んこの中で元気に遊ん
でいる中で、その子供だけが泥んこの中で
遊ぶのを嫌がった場合、それは「正常」な
反応です。

人の100倍の皮膚感覚があるのですから
泥んこの中に入るなんて拷問でしかありま
せん。

しかしそれを見た健常者はそれを「異常」だ
と捉えます。

そして

「他の子供達は活発に遊び、泥んこの中で
土と戯れ、自然と触れ合い、すくすく育って
いるというのに、この子供は自然を嫌がり
健全に育つ事を自ら拒絶している。」

などと言い出すのです。

さらに

「対応策としては他の子供達に混ざって
泥んこの中で遊ぶようにして自然の中で
心を育むようにする必要があるだろう」

などという見当外れの対応策を専門家が
言い出し親や周りに人間はその子供を泥
んこの中で少しでも長く放り込もうとする。

こんな狂気の沙汰が平気で行われている
のが現実です。

何故このような事になるのか?

それは健常者は発達障害のある人間の
反応を常に自分の感覚を基準にして計り、
「異常」なものとして捉えるからです。

ですから健常者の方がアスペルガー症候群
などの発達障害のある人と接するにあたって
まず心がけなければならない事は

「この人の反応はこの人の状態からすれば
全て正常なことなんだ」

という事を理解する事でしょう。

先の泥んこの中に入るのを嫌がる子供の例
にしても「この子の状態ではこれが正常なんだ」
という見方をするようになれば、

「では、何故これで正常なのだろう?」

と考えるようになり、その結果人の100倍
の皮膚感覚なのが原因でそうなっていた事
が判明するかもしれません。

それが判明して初めて健常者は

「そうだったのか!だったら泥んこの中に
入るのを嫌がるのも当然の事だ」

という具合になり、そこまで来て初めてその
子供に対する真の理解に辿り着けた事に
なるのです。

また自閉症者がパニックになって叫び声を
上げるのも正常な事なのです。

健常者がそれを異常と考えればとにかく口を
塞がせて黙らせようとするでしょう。

しかし健常者がそれを正常であると捉えた時、

「何故静かな場所でパニックになるのが正常
なのか?」を考えるようになり、その結果、
背景にある、そうなるのが当然だという原因
が見えてくるかもしれません。

もし健常者の方がアスペルガー症候群の
人間の行動や反応を「異常」だと思った
なら、

『それは「異常」なのではなく「ただ自分が
分からないだけなのを、異常という便利な
言葉を使って片付けているだけ」なのだと
いう事を知っておいて欲しいです。』

そして、さらに

『アスペルガー症候群の人間が起こす問題
や反応は、その状態であればそうなるのが
当然の正常なものなのだ』

という事を常に念頭に置いてアスペルガー
症候群の人間と接するように心がけて
欲しいですね。
とうふさんへ
こちらこそ、リンクありがとうございます。
確かに、図版やイラストが多く、わかりやすい本ではあると思います。
確かに、立場によって大きく評価は分かれるでしょう。また、定型目線満載なので、今後の「目線の違い」を解き明かす礎になる本だと思います。
takkantさんへ
はじめまして、ようこそ。

オムレツのはなし、わかりやすかったです。
確かにそういった変な対応は無意味ですね。

「理解」について、感覚過敏についてはおっしゃるとおりだと思います。

ただ、コミュニケーション面に限って言えば、相手のあることだし、周り全部の定型発達者が「真の理解のある支援者」であってくれることは望めませんので、非定型側からの定型の理解を通じて何とかしていくしかないように思います。

ただ、その際に非定型者が、何とか「失敗を通さずに学べる」ようにできたらなあと思うんです。

そういった面では定型さんの感覚が露骨にでているので役に立つ本だったと思っています。

まあ、ものは考えようということで。

ではでは
のらさんへ
確かに、凹むだろうなあという本はありますね。

役に立つ本は結局アスペルガー側が著者にならなきゃ無理だと感じます。

でも、多数派対象の本と違って出版部数の面でやはり難しいのかなという面と、アスペルガーよりに立って書くと定型サイドにとってきつい本になるので出版されにくいかなあなどと考えてしまいます。

ま、それ以前に「アスペルガー者の失敗体験」の適切な分析がなされていないのが問題なのかとも思いますが…。

ところで、その酷い本ってのをぜひ教えていただけませんか?秘密コメントでも結構ですので。

奈良人さんへ
『誰か書いてくれ~』ってのは私も思いますが、書いてくれそうにないので、ときどき定型発達者研究と称して定型さんとのやりとりのコツを書いている次第です。

でもねえ、ネタとしての「トラブル話」が必要なのよ、これ。

そこが難儀なんだわさ。

というわけで、ネタ募集中>ALL

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ひどい本
定型発達者と発達障害者の人数比を考えれば、定型向けに本を作った方が売れるという判断なのでしょうね。

ひどい本といえば、この前、会社の人事部に立ち寄ったら、机の上に「セミナー:発達障害者・アスペルガー者を採用しない方法」というテキストを発見しました。
そんなセミナーが開かれていることに衝撃を受けました。

なんだか最近、発達障害に対する「歪んだ理解」が広がっている気がします・・・
RE:ひどい本
まあ、出版上はそうでしょうねえ。

アスペルガー者に必要なことをまとめたら自費出版でもするしかないかも。ただ、「親」という読者がいますから、アスペルガー者向けの本の出版の余地がないとはいえないかもしれません。

それにしてもひどい本ですねえ、セミナー:発達障害者・アスペルガー者を採用しない方法」ですか。

発達障害者をうまく雇用するためのセミナーならまだしも…

しかし、ぜひ読んでみたいなあ。でも表には出てこないんだろうなあ、そういった本。

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痛い心わかります
とってもとってもわかります。
団体についても支援者の支援の為の団体が、多いですよね。
被支援者が蚊帳のそとにされてるっていうか、被害妄想かもしれないけど。
私の理想は被支援者が支援者になるくらい皆でたくさん考えて成長できる部分は成長しましょう。
となるのがいいのだけれど、と思っています。
心の悩みまでは理解してくれなくてもいいのですよね、それは自分で解決すべきですから。
存在と欠点を理解してくれさえすれば。
それは逆の立場においても、当然しかりですよね。
(意地悪な人ってきらいだけど、きっと自分の理解の及ばないところの良いところがあるんだろうなってこと)
Re: 痛い心わかります
支援者のための支援団体…、多いかも。
ま、親の活動などが主体となる場合が多いからそうなりやすいのかもしれませんが。

支援者と非支援者で勉強会をできるような感じがあればいいですねえ。

はじめまして
今更ですが…

翻訳者で当事者さまのニキ・リンコさんが、「外国人向けの日本語の本」が日本文化や日本人の気質や感性なども説明してあり、大変役に立つと言っていました☆
Re: はじめまして
えみちぃさん、はじめまして。
なるほど、そういうのも役に立つかもですね。
ありがとうございます。

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