定型発達者における疑問文の分化とアスペルガー者の陥りやすい罠(前編)

幼児はいろいろな疑問をぶつけてくる。


そう、「何で?の時期」である。


なんでおつきさまはみーちゃんについてくるの?

 なんでだろうねえ、お月さまはみーちゃんが好きなのかな。

なんで、たまごはまるいの?

 うーんなんでだろうねえ。

なんでお花がさくの?

 …


答えられる質問かどうかはお構いなし。
とにかく疑問をぶつけてくる。


これをかわいらしく感じる人は多いだろうが、苦々しく思う人は定型非定型にかかわらず少ないだろう


(ま、なんて答えたらいいのか困ってしまうケースは多々あろうが。)


定型発達児でもアスペルガー児でも、こういっった時期はある。


が、それ以降「理由を明かすことの楽しみ」に没頭してしまうことが多いアスペルガー者に対して定型発達者では成長につれ「疑問文」自体が様々に分化していくと考えられる。



単純な「疑問」の他に

「皮肉」「怒りの表明」「非難」「注意」「指示」「制止」などである。


かなりバリエーションは多い。


これは相手から発せられる疑問形に付随する表情等、定型児では幼児期から常にフィードバックしているためと「理由を明かすこと」にあまり没頭しないことが原因ではないかと思う。


これらの区分を理解して運用していくことがコミュニケーション能力の発達とするなら、小学校中学年あたりでこの手のコミュニケーション能力が定型発達者では急激に発達するらしい。



さて、疑問文にいろんな意味が生じれば、疑問形に疑問以外の意味を込めることだけでなく、答え方にも当然分化が起こる。



 疑問形→答える。

     ↓

 疑問形→応えるand答える



と、分化して発達するようである。



応える内容も。「感情」や「要望」と分化していく。



(この分化は、相手の表情や声のトーンをなかなか捉えられないアスペルガー症候群者では当然起こりにくいわけだが、そのことに関する話しはちょっとおいておく。)



とまれ、定型発達者のコミュニケーションでは、徐々に「答える」ことより相手の感情や要望に「応える」方が重要だという認識になってくるようだ。



そこで、特別に設定された質疑応答の場(代表的なのは国会の議論や学術学会の、講演会等の質疑応答、ディスカッションの場)以外の場では「(何故…?どうして…?などの)ダイレクトな疑問文」は「質問」の意味では徐々に使わなくなってくる。


(「ねぇ」「ところで」などの接頭辞がついて、衝撃を緩和しているケースはあるだろうが)


ではどういった場面で「ねぇ」「ところで」などの前置きなしの「ダイレクトな疑問形(何で?どうして?など」が使われるかというと。



「怒りの表明」「非難」「注意」「指示」「制止」などをする場面である。



実際にはシチュエーションによって混在しているのであるが、こんな感じ。


「何であなたは協力しないの」
(怒りの表明・非難、注意、指示)

「そこまで言わなくてももいいんじゃない」
(非難、制止)

「何やってるの」
(怒りの表明・非難・制止)

「何度言えばわかるんだ」
(怒りの表明・非難)

「今、何時だと思っているんだ」
(怒りの表明・非難)

「遅刻してもいいと思っているのかね」
(非難・注意)

「馬鹿にしているのか」
(怒りの表明・非難)



さて、疑問形の分化があることを知らないアスペルガー者はは当然疑問形に回答形で答えようとする。(その方がアスペルガー者的には話しのつじつまが合うからだ)


もしくは質問の意味がわからずに、その意味を問う疑問形で返してしまう。


こんな感じだ。↓


君は協力する気がないのかね。
   →ありますけど(もごもご)…
   →協力って何をするんですか?

あんたいったい何してるんだ?
   →え、○○してます。


何度言えばわかるんだ
   →三回目です。
   →無言(何度だっけ?と考えはじめる)

そこまで言わなくてもいいんじゃない
   →なんで言ったらいけないんですか。
   →言わなきゃわかって貰えないでしょう。

馬鹿にしているのか
   →馬鹿にしていません。
   →そんなことはないですが?


この対応は間違いなく相手の気持ちを逆撫でしてしまうのだが、アスペルガー者では
それ以前の表情などから、定型発達者が「既に」感情を昂じさせていることに気がつかないため、こういった対応をしがちである。。



だが、前記の定型発達者における質問の分化を前提に置けば、定型発達者に対応するのに上記のような対応をすることが、定型発達者の感情を逆撫でする(すなわち怒りをさらに増大させる)という理由は理屈として理解できるだろう。


しかしながら、相手の表情などから相手の感情の動向を察するということは難しいのがアスペルガー者である。



経験を経れば状況などからある程度察することができるようになるとはいえ、それ以前にわからないまま「怒りを増大させた相手」にさんざん罵倒されたり、相手との関係が気まずくなったりして、自分に自信を持てなくなるアスペルガー者も少なくはないだろう。


これを回避するのは


ダイレクトな疑問形には


「とりあえず手をとめ」
「申し訳ありません(ごめんなさい)」



と対応するのが定番のトラブル回避法なのである。


相手に非難等の意図がない場合、相手が意図について説明してくれるし、非難等の意図がある場合は、その原因たる「怒り」を鎮めることになる。


ま、これが下手に出るということであるが、アスペルガー者が身につけておいた方がいいテクニックである。


定型発達者の疑問形の分化ということを考えれば「何でそんなこと(下手に出ること)をしなきゃならないの」という腑に落ちなさは多少は軽減されるのではないだろうか?




さて次回は質問を発するということについて考えてみる。


後編はこちら






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コメント

そうですよね
いつも見ています。継続してアップ凄いですね。私も頑張ります。ここのところ寒いので体に気をつけて下さい。また遊びに来ます。
質問するのはたしかにむずかしい・・・
単純に疑問に思うことについて、「なぜそうするの?」と理由を尋ねたり、「どうしてこのようなことになったの?」と経過をたずねたりした場合、定型発達の人たちの反応は、いきなり怒り出すか、「ごめんなさい」とひたすらあやまるか、「あなたの気持ちはよくわかる」と言い出すか、のどれかの場合が多いなあと、思います。

質問が、怒りの表明や非難や要求のように聞こえてしまうからでしょう。

突然あやまられて驚いて、「いや、あやまってほしいわけじゃなくて、ただ経過を知りたいだけなんだけど、どういうことなの」というと、「こんなにあやまっているのにどうしてわかってくれないの」とキレる。
(「今更あやまってもだめだ」と突き放されたように思うらしい)

「あなたの気持ちはよくわかる」といわれて「いや、気持ちじゃなくて、どうしてかを知りたくて聞いてるだけなんだけど」というと、「冷たい人だ」とキレる。
(「せっかく思いやってあげているのに、その気持ちを汲むこともせずに拒絶した」と思うらしい)

「なぜ」という質問をすると、こちらが相手を非難しているとか、相手に対して怒っているというメッセージを相手に伝えてしまうようだということは、最近私にもようやくわかってきました。

相手を怒らせたり、おびえさせたりしないためには、「怒っていませんよ」「私はあなたの味方ですよ」「責めてるわけじゃないですよ」といったメッセージをたっぷり盛り込ませた上で(対面で聞く場合は、終始笑顔で)、「どうしてこうなったのかを単純に知りたくて聞いている」というのをまぎれこませるしかないように思いますが、これをしても、肝心の聞きたかった答えはなかなか得られない(「あなたの味方」というメッセージには「ありがとう」という返答があるけれども、肝心の問いは、なかったことのようになってしまう)というのが今まで経験したことです。

定型の人は、「なぜするか」を自分の原則に照らして一つ一つ考えて動くよりも、「みんなが『よし』としていること」「そのときどきの流れ」を感じとって無意識に動く場合が多い(しかも「みんな」そうしていると信じ込んでいる)から、「なぜ」と聞かれることに弱いのではないだろうか、と、今のところは思っています。

でも、「なぜそうするの?」「どうしてこのようなことになったの?」を考えることは、大きなものに流されがちな定型の人たちにとって、必要なことであるはずとも思います。

怒らせないように気をつけながらも、質問は発し続けたいと思っています。行き詰ったと本人が感じたときに、耳に届くかもしれないし・・・
RE:そうですよね
毎度おおきに。
お気遣いありがとうございます。

後編おたのしみに。
RE:質問するのはたしかにむずかしい・・・
後編はまさにそのあたりをつつこうかと思っておりました。(ってすでに原稿はできてるんですが…)

なぜ?どうして?の問いかけは難しいです。

質問を発する側がどうとられるかということとの兼ね合いもありますし、余り無理なさらないで下さいね。
この間のことをさらに深くかいてくださったのですね。
少しだけ定型さんの思考パターンの解明ができました。

*この間のことを記事やっとこさ上げました。
不都合な点があれば、申し出てください。
事後報告で申し訳ありません。
奈良人さんへ
そうです、プチ自助会のネタから考えを膨らませたら「こんなんでましたぁ」です。

後編でプチ自助会記事へトラバさせて貰います。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
疑問文で怒られた時
こんばんは。
狸穴猫さんの書いてること、とてもよくわかります。
疑問文で怒られてる時に疑問の回答で返すと、相手の人に「弁解」「言い訳」「性格が悪い」「可愛げがない」という印象を与えてしまうんですよね。

ところが、私の場合、怒られたときは全部反射的に 「ごめんなさい」「すみません」で返していたら、謝ったはいいけど何で自分が怒られたのかが素でわからなかった場合、「謝れば済むと思ってる」「口先だけ」と思われて、よりいっそう相手を怒らせることもあったんです。

今はそういう時は、相手の怒りや嘆きや非難に共感する風の姿勢にプラスして「私の悪かった所を教えていただけますか?」みたいにこちらからも質問するようにしているのですが、この言い方であってるのか、あまり自信ないです…。
あ、なるほど
「答える」だと、会話がそこで終了。
「応える」だと、会話の発展性がある。
1つ覚えました。

「答え」た後、更にうんちくをくどくどという私。娘をいつも追い詰めてしまいます。反省。
「応え」て、話のクッションを柔らかくせねば。
RE:疑問文で怒られた時
のらさん、こんにちは。
きいといて、「言い訳」って言われちゃ身も蓋もない気もするんだけど、定型さん的にはそうなんですよね。
ところで応え方、それで正解だとおもいますよ。
RE:あ、なるほど
わかっていてもつい「答え」たくなってしまうのがアスペの性…

で、息子との会話、質問と答えあいになっていると友人から「親子漫才だ」と言われます。
はじめまして・・・
今年の春から高校生になる、15歳の女子です。
私は小児発達科で、「グレーゾーン(定型発達と自閉症スペクトラムの中間)」と診断されました。定型発達者と自閉症者。自分はこの両方の要素を持っていることになるのですが、バリバリの定型さん(恐らく)である母とは衝突が絶えません。
例えば、ある日の夕食中の会話なのですが・・・

母「(私の側を指差して)ここの食卓のところ汚れてるよ!アンタがやったの?」
私「(汚した覚えがないので)違うよ、私じゃないよ」
母「何言ってんの?!アンタがやったんでしょ!」
私「どうして質問に答えただけで怒るの?!」

どうやらこの時母が言った「アンタがやったの?」は、私に質問したのではなく、私が謝罪することを想定して言った言葉だったようです。
この様に、私が質問の意味を取り間違えて親子ゲンカに発展する・・・というのが日常茶飯事です。疑問文は難しいですね・・・・
長文駄文失礼致しました。

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