分科会のひとつ、「ええやんちがっても、広汎性発達障害への支援、大阪での実践」のなかで、支援の専門家や医師の講演に混じって、当事者からの意見として、
「発達障害の医療に何を期待するか」と言う題で下記のような事をしゃべってきた。
以下その内容だいたいそのまんま。
(多少アドリブが入ったところは抜けている)
●さて当事者として思うのは第一に、適切な診断が出来る医療機関が増えて欲しいということです。現在、とにかく医療にたどり着くまで大変。というのがあるんです。
発達障害者支援センターに行って、発達障害の診断可能な医療機関を教えてもらう。その後、診察予約に何ヶ月…という感じですね。
それがネックになって診断を受けるのを諦めている人も数多くいます。
当事者が、どうしても発達障害について熟知した先生に診て欲しいと思う一つの理由として、一見社会適応できている発達障害者の精神症状は軽く見られやすいということなんですね。
私など、たぶんここで話しているのを見る分には「アスペルガー症候群らしからぬ」当事者だと思いますが、医療機関にかかっても、ここでお話しているような「社会適応モード」でつい話してしまうんです。
社会適応モードってどういう感じ…かといえば、
うちの息子はいうんです。「あんた、門から一歩出ると顔が引きつってる」
というようなことです。
まあ、慢性ニコニコ、愛想良く…、表情もあり、話す言葉に抑揚もありという感じなんです。定型発達者なら普通のことですが、これはアスペルガー症候群者には相当の努力なしにはできない。
つまり、これはアスペルガー症候群当事者の地の姿というか生来の姿とは遠いものになってしまっているんです。完全に対人交渉用に付け足したものなんです。
実は今もここでこうやっているだけでかなり顔の筋肉が疲れつつあるんですが、まあ、それはちょっとおいておいて
私がどこで精神科の医療を受けようかと考えたときのことをお話します。
ちょうど息子のアスペルガー症候群が分かった直後でした。医療機関で紹介された参考書籍を読んでいて、私もアスペルガー症候群の可能性があると思ったので、これは一般の精神科のクリニックではなく、発達障害の専門の先生がいる医療機関にかかりたいと思ったんですね。
もし、「社会適応モード」で受診したならば病状が軽く見られ、治るものも治らないかもと考えたわけです。
それで、発達障害の専門の先生のいる今の病院にお世話になっているわけですが、
これ、実は本来から言ったらベストではない選択なんです。
なにせ自宅から遠いので通いにくい。
今の主治医は信頼していますが、自宅から近いところで発達障害を見てくれる先生がいたら…と、思わないでもないわけです。
ですから、これからどんどん発達障害を診てくれる臨床家の先生が増えて欲しい。
そう思います。
●さて二点目です。
現状、日本では、発達障害はある程度社会適応出来ていれば診断しないという風潮のような気がします。
社会適応状態が良ければ医療の対象にならないというのは、ちょっと待ってと言いたいんです。
片足のない人に関して、義足をつけて杖なしで歩けるから障害でないとするようなものではないでしょうか。
発達障害が脳の機能障害である以上、医療、すなわちメンテナンスが必要なのではないでしょうか。
特に就業など社会適応している人はストレスの高い場にいるのだから、逆に就業していない人よりもメンテナンスが必要なのかもしれないと思うんです。
でないと、不適応が外に出ず、家庭内ででちゃうとかいうこともあり得るのではないかと思います。
じゃ、メンテナンスって何?って言えば、発達障害に理解のある専門家による必要に応じたカウンセリングなどです。
医療カウンセリングが必要に応じて「通いやすいところで」「通えるような医療費で」、受けられることが出来るようになって欲しいと思います。
●そして三点目。
不適応に関する対策ですね。
それはグループワークだったり、それからソーシャルスキルトレーニングだったり。
これもまた医療の一部として、普及して欲しいものです。
機能障害の改善という観点から考えれば、これはハビリテーションなんです。だからこれは、是非医療の分野が主体となってやって欲しい。
その中でまず、大事なのはソーシャルスキルトレーニングだと思うんです。
今まで自助会に参加したり、今では自助会を主宰したりしている関係でかなりの数の当事者と会いましたが、
特に社会適応状態が良くない方は、とにかく基本的なソーシャルスキルが出来ていない人が多い。声の抑揚、音量、挨拶のしかたなど、ごく簡単なことです。
それはごく簡単な講習的なもので何とかなると思うんです。でも、それだけでは社会適応はできない。
となると、それなりに高度なソーシャルスキルですが、こちらは深く当事者の内面と関わってきます。
アスペルガー症候群の特質から、本人が理屈で納得出来なければ、形だけの実行は出来ない。ということなんです。
今、現状、私たち当事者がもっとも欲しい情報は「定型発達者と、発達障害者、どう感じ方や考え方が違うのか」なのです。
社会適応するためには必須の情報です。
これ、情報がないんです。
私、インターネット上で最近流行のブログをやっていまして、いちばんの人気カテゴリーは「定型発達者研究」とシリーズものです。
当事者としてはそれだけのどから手が出るほど欲しい情報なんですが、情報にぶち当たらない。
まあ、それでうちのブログが大繁盛しちゃうわけですが、もっと医師や心理士など専門家の意見も聞きたいなあと思いますし、もし既成の情報があったら欲しいところなんです。
なぜ、そういった情報が必要かというと、これがわからないで丸覚えでやってしまうと、理詰めでしか納得できない私のようなアスペルガー症候群者は、適応するのにストレスが大きくなってしまうんです。
とはいえ、定型発達者にとって「当然」のことなだけになかなか表に出てこない。
たぶん、今だ集積されていないんだと思います。
そこで医療現場の出番です!
医師の皆さん、心理士の皆さんはいちばん発達障害者の内面を知ることのできる存在だと思います。
ですから、大人の発達障害について、定型者とアスペルガー症候群者の感じ方、考え方の違いについてサンプリングできるのは医療現場は最適な場だと思うんです。
医師や心理士の先生方に、サンプリングしていただいた結果をこのような学会などで集積していただき、「PDD者にわかる形」で、必要なソーシャルスキル情報をピックアップして、デイケア・ソーシャルスキルトレーニングなどに生かしていって欲しいし、できればテキストの様な本になってくれればありがたい。
また、そういった情報を生かした支援の方法論をこれからどんどん充実させていって欲しい。そう思ってやみません。
(挨拶部分は割愛)
聴衆は基本的に精神科医師と精神科コメディカル。
約200名といったところだろうか。
…って、そんなところで、図々しくも、医療に対する期待…と言うのを多少過大気味に主張してきたわけだ。
にしても、抄録見て、発達障害が大きく取り上げられているのにびっくり。
午前の講演も発達障害がらみ、午後の一番大きい会場も発達障害関係。
関心の高さが窺われる。
正直、今回の講演を引き受けたとき、実は後から「しまった」と思った。
なにせ専門家相手である。何をしゃべったらいいんじゃい?って感じである。
「発達障害の医療に何を期待するか?」なーんてタイトルは、依頼者と話していてついノリでポ~ンと口から出てしまったものだ。(大汗)
いいんだろか、こんなで…
とはいえ、なんとかかんとか考えれば出てくるもんだ。
頭は生きているうちに使わなきゃいけないと再認。
しゃべってみると、またやりたくなるのが講演というものだ。
(っつうわけで、ご依頼歓迎です)
しかし、国際会議場なんて、はじめて入ったなあ。
普段はいる機会なんてないもんね。
なかなか楽しい体験だった。
しかし…作業所の即売会(クッキーやパウンドケーキなど)があるのには驚いた。
熱心だなあ、知的障害者関係の団体は。
全国団体だもん、すごいよなあ。
この辺、社会性の障害があるPDDでは団体を作ることも難しいだろうなあなどと言うことも考えてしまった…。
それはともかく、行きがけ、乗換駅の天満橋でちょっと時間をつぶしたのだが、そこで見た、「天満橋のたもとから見た中之島」という景色は、水都大阪を象徴するような景色だなあと思った。
大阪に来て5年たつが、こういう景色を見たのは実ははじめてなんじゃないだろうか。
なんか水辺がとっても気持ちよかった。

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