当然、職もない人間に借りられるアパートなどない。職が先だ。亭主はのほほんと構えている。
当時息子が1歳半。住みかも決まらない私は働きにでるにでられない。そんな頃、確か、市役所への年金か何かの手続きをするべく、バス代も節約と、息子を背負って徒歩約3キロの道のりを市役所へ。用事は済ませたものの、もう帰り道足に疲れがきていた。
折悪しく、小雪がちらついてきた。傘は持っていた者の冷え込む中、これからどうなるんだろう?生きていけるのだろうか?引っ越し費用すらない。この時代に「宿無し」になるなんて…生活費すらあと1ヶ月分持つんだろうか?という有様である。
あまりの惨めさに涙が流れてくる。
中央線の踏み切りが鳴り、足を止める。
このまま足をすすめれば惨めさから逃げられるよな…
そんなことをふと考えてしまい、いけないと身を固くする。
眠り込んでいる背中の子のぬくもりが、踏切内に進もうとする私の足を止めてくれた。
中央線は行き過ぎて行った。
結果的には余命3月もなかった私の父が手をさしのべてくれて私も息子も今、生きている。
でも「職の不安」が少しでも脳裏をよぎるとき…そのときの中央線の踏み切りの映像がフラッシュバックして私をパニックに陥れる。
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