詳しくはこちら
=======================
プロローグはこちら (1)はこちら (2)はこちら (3)はこちら
(4)はこちら (5)はこちら
=======================
毎度になるが、一応、女史の講演の動画のURLを貼り付けておこう
テンプル・グランディン 世界はあらゆる脳を必要としている(動画)
グランディン女史の主張は典型的な成功論がベースにある。
構造を簡単に書くと、
「私は自閉症だがこうして成功した」
↓
「同じ方法をやれば自閉症者は成功できる」
↓
「自閉症の子どもにもこの方法で成功を」
↓
「そのための教育システム整備をすすめよう」
というふうになっている。
(太字の部分が成功論の部分、細字がオピニオン部分)
実にアメリカンだなあと感じる。
そして明解だ。
根底には
「成功すれば幸せになれる」
があるだろう。
ま、その根底のところが私とスタンスがちがうのだが、成功論の危険性をちょっとばかり感じてしまった。
適応に悩みを持つ自閉症スペクトラムの成人当事者が聴いた場合どう感じるか?
一度限りの人生だ。
やり直しのききにくい日本の社会に生きる身にとっては結構堪える。
「いまさらどうしろって言うんだ?」
「そんな才能は私にはないよ」
「良い教育がなければ終わりってことか」
ってなぐあいに落ち込むだろう可能性は十二分にあるだろう。
私はここに成功論の危険性を私は感じてしまった訳だが、女史の講演は裏も仕掛けも何もない分まだいい。そして著書を読めば意外に現実的な具体的方策が書いてある。
![]() | アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク テンプル グランディン ケイト ダフィー 梅永 雄二 明石書店 2008-06-17 売り上げランキング : 17324 おすすめ平均 ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この本などは、かなり具体的な方策に突っ込んでいる。
(但し、アメリカ社会ってのが前提の本ではある。)
さて、ここからは連想ゲームだ。
世の中には成功論・成功談というものが腐るほどある。
最近はネットというメディアもあるので書籍の形態をとるとは限らない。
玉石混淆である。現実的な方法論があるものもあればそうでないものもある。
適応に悩む当事者はわらをもすがる気持ちでさまざまな情報を求める。
(自閉症スペクトラムの児童を持つ親御さんも、我が子の療育の参考にならないかとこういった情報を探すだろう。)
当事者本に含まれる成功談
世間の渡り方に関するもの
コミュニケーションに関するもの
いわゆる成功法・自己啓発書の類
等々
だが、この中には結構危険なものも含まれていると私は考える。
ついつい惹かれてしまうのはこのタイプ。
「私はこの方法で成功した」
↓
「同じ方法であなたも成功しよう」
↓
「さあ、勇気をだして一歩を!」
挿絵や図表などビジュアルに訴えるものがくっついていれば説得力倍増である。
ま、この論法、全て悪いとはいえない。
具体的な方法・方策が付随していればそれはそれで役立つこともある。
前向きになりたい人の背中をちょこっと押すという意味で意味のある場合もある。
ただ、問題なのは提示された方法が具体性を欠く場合だ。
方法自体が
「前向きな発想をする」とか
「柔軟な発想をする」とか
「自分に限界を置かない」とか
「発想の転換を心がける」とか
「自分を見つめ直そう」とか
「自分の気持ちに素直に」とか…
「自分のありのままを受け入れよう」
とかいった「気の持ちよう」や「姿勢」だったり
「整理整頓をしよう」とか
「自己管理をしよう」とか
「取捨選択を適切にしよう」とか」…
「批判的精神で物事をみてみよう」
「道は自分できりひらこう」
というような、「ただの常識」の場合である。
たいてい「方法」の具体性のなさを覆い隠すように
「こんな経験をした」
「こんな悩みがあった」
「いろいろ紆余曲折があった」
「こんなきっかけで、私はそうすることができた」
という前置きの「物語」 がついていて、読者を「うんうん」とうなずかせる。
なぜ危険かというと、具体的な方法論でないため
実は肝心の「一歩」を踏み出せない仕組みになっているからだ。
著者の成功体験をいくら「うんうん」とうなずきながら読もうが、実はろくに役に立たないのだが、前置きの物語の具体性によって
「一見具体的」
な成功体験談になっているため、疑似体験をした気分にもなりやすく、ある意味中毒性がある。
ついでに言うと、はじめのほうの「物語」で「うんうん、私も…」とうなずく事が多いため、後半がしっくりこなくても気分的に「否定」がしにくい構造にもなっている。
さらにに自己評価をさげる危険もある。
それは、
「さあ、あなたも勇気を出して一歩をふみだそう」
が実際には具体的方策がないため簡単にはできないわけだから、一見前向きな締めのメッセージが
「できないあなたはダメ人間」
という負のメッセージにすり替わるという構造になっているのだ。。
(自己啓発本や自己啓発セミナーなどでは上記のような構造を利用するものが多い)
さて、疑うことが基本的に苦手なアスペルガー症候群者の場合、「うんうん」とうなずきながら読むうち、ついつい盲信してしまうという危険性は定形発達者の場合より高くなると考えられるのではないだろうか。
具体的な方法論を背景にもったグランディン女史の成功談ですら、環境によっては「できない」と落ち込む危険性があるのだから、能力やタイプが違う人の成功論や成功体験談をうのみにしないようより気をつける必要があるだろう。
他者の成功体験を読む場合
★「具体的方策」があるか。
★「その方策は自分の現実の環境で使えるか」
このあたりが「役に立つか」のチェックポイントだろう。
と、まあ、大幅脱線したが成功論(成功体験談)を読んだり聴いたりする時に気をつけておくべきチェックポイントがまとめられたからまあ、よしとしよう。
<まだまだ続く>

にほんブログ村
発達障害ランキング
↑ブログランキング参加してます。↑
応援の1日1クリックを
またも脱線?
…
はい、次は本論に
戻ります。
というわけで
ぼちっと↑
お一つ
- 関連記事
-
- テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(9)-自閉者が社会的生存をするために必要なこと
- テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(8)-自閉者が社会的に生存するとは-
- テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(7)-発信する当事者ばかりではない-
- テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(6)-成功論・体験談の危険性-
- テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(5)-Web上でのアスペルガー当事者間の温度差-
- テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(4)-アスペルガー者の知能の偏り、体力の差はとても多様だ-
- テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(3)-天才(予備軍)ばかりではない-