テンプル・グランディン女史の講演から考えたこと(6)-成功論・体験談の危険性-

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毎度になるが、一応、女史の講演の動画のURLを貼り付けておこう
テンプル・グランディン 世界はあらゆる脳を必要としている(動画)



グランディン女史の主張は典型的な成功論がベースにある。

構造を簡単に書くと、


「私は自閉症だがこうして成功した」
 ↓
「同じ方法をやれば自閉症者は成功できる」

 ↓
「自閉症の子どもにもこの方法で成功を」
 ↓
「そのための教育システム整備をすすめよう」


というふうになっている。
(太字の部分が成功論の部分、細字がオピニオン部分)


実にアメリカンだなあと感じる。
そして明解だ。


根底には
「成功すれば幸せになれる」
があるだろう。


ま、その根底のところが私とスタンスがちがうのだが、成功論の危険性をちょっとばかり感じてしまった。


適応に悩みを持つ自閉症スペクトラムの成人当事者が聴いた場合どう感じるか?


一度限りの人生だ。
やり直しのききにくい日本の社会に生きる身にとっては結構堪える。


「いまさらどうしろって言うんだ?」
「そんな才能は私にはないよ」
「良い教育がなければ終わりってことか」


ってなぐあいに落ち込むだろう可能性は十二分にあるだろう。


私はここに成功論の危険性を私は感じてしまった訳だが、女史の講演は裏も仕掛けも何もない分まだいい。そして著書を読めば意外に現実的な具体的方策が書いてある。


アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワークアスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク
テンプル グランディン ケイト ダフィー 梅永 雄二

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この本などは、かなり具体的な方策に突っ込んでいる。
(但し、アメリカ社会ってのが前提の本ではある。)


さて、ここからは連想ゲームだ。


世の中には成功論・成功談というものが腐るほどある。
最近はネットというメディアもあるので書籍の形態をとるとは限らない。
玉石混淆である。現実的な方法論があるものもあればそうでないものもある。


適応に悩む当事者はわらをもすがる気持ちでさまざまな情報を求める。
(自閉症スペクトラムの児童を持つ親御さんも、我が子の療育の参考にならないかとこういった情報を探すだろう。)


当事者本に含まれる成功談
世間の渡り方に関するもの
コミュニケーションに関するもの
いわゆる成功法・自己啓発書の類


等々


だが、この中には結構危険なものも含まれていると私は考える。


ついつい惹かれてしまうのはこのタイプ。


「私はこの方法で成功した」
 ↓
「同じ方法であなたも成功しよう」
 ↓
「さあ、勇気をだして一歩を!」


挿絵や図表などビジュアルに訴えるものがくっついていれば説得力倍増である。


ま、この論法、全て悪いとはいえない。
具体的な方法・方策が付随していればそれはそれで役立つこともある。
前向きになりたい人の背中をちょこっと押すという意味で意味のある場合もある。


ただ、問題なのは提示された方法が具体性を欠く場合だ。


方法自体が

「前向きな発想をする」とか
「柔軟な発想をする」とか
「自分に限界を置かない」とか
「発想の転換を心がける」とか
「自分を見つめ直そう」とか
「自分の気持ちに素直に」とか…
「自分のありのままを受け入れよう」

とかいった「気の持ちよう」や「姿勢」だったり

「整理整頓をしよう」とか
「自己管理をしよう」とか
「取捨選択を適切にしよう」とか」…
「批判的精神で物事をみてみよう」
「道は自分できりひらこう」

というような、「ただの常識」の場合である。

たいてい「方法」の具体性のなさを覆い隠すように

「こんな経験をした」
「こんな悩みがあった」
「いろいろ紆余曲折があった」
「こんなきっかけで、私はそうすることができた」

という前置きの「物語」 がついていて、読者を「うんうん」とうなずかせる。


なぜ危険かというと、具体的な方法論でないため
実は肝心の「一歩」を踏み出せない仕組みになっているからだ。


著者の成功体験をいくら「うんうん」とうなずきながら読もうが、実はろくに役に立たないのだが、前置きの物語の具体性によって

「一見具体的」

な成功体験談になっているため、疑似体験をした気分にもなりやすく、ある意味中毒性がある。


ついでに言うと、はじめのほうの「物語」で「うんうん、私も…」とうなずく事が多いため、後半がしっくりこなくても気分的に「否定」がしにくい構造にもなっている。


さらにに自己評価をさげる危険もある。

それは、

「さあ、あなたも勇気を出して一歩をふみだそう」

が実際には具体的方策がないため簡単にはできないわけだから、一見前向きな締めのメッセージが

「できないあなたはダメ人間」

という負のメッセージにすり替わるという構造になっているのだ。。


(自己啓発本や自己啓発セミナーなどでは上記のような構造を利用するものが多い)


さて、疑うことが基本的に苦手なアスペルガー症候群者の場合、「うんうん」とうなずきながら読むうち、ついつい盲信してしまうという危険性は定形発達者の場合より高くなると考えられるのではないだろうか。


具体的な方法論を背景にもったグランディン女史の成功談ですら、環境によっては「できない」と落ち込む危険性があるのだから、能力やタイプが違う人の成功論や成功体験談をうのみにしないようより気をつける必要があるだろう。

他者の成功体験を読む場合


 ★「具体的方策」があるか。
 ★「その方策は自分の現実の環境で使えるか」



このあたりが「役に立つか」のチェックポイントだろう。


と、まあ、大幅脱線したが成功論(成功体験談)を読んだり聴いたりする時に気をつけておくべきチェックポイントがまとめられたからまあ、よしとしよう。


<まだまだ続く>


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またも脱線?

はい、次は本論に
戻ります。
というわけで
ぼちっと↑
お一つ



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コメント

当事者本
ええとこなし?の私にしてみれば、適応できてる内容をありのままいってるけど、「自慢しい」「いきってる」っていうしか思えないのです。
かといって、sos記事を綴ると攻撃と解釈されるし。
成功論的内容をみると「同じ当事者やのになんでできひんの?」という癒しモードよりも凹みモードに陥るのです。
記事にしたのですが
トラックバックがうまく行かないです。。。


私の考えとしては、記事「成功例の危険な読み方」を見ていただくとわかりますが、当事者ブログを「マニュアル」として読んでる方がどうも多い様な気がしてならないんですよね。


情報の取捨選択がうまく行かないのかなって…(-_-;)
失敗談のほうが、役に立つ
随分前ですが、日本経済新聞に
「敗軍の将、兵を語る」という会社を倒産させた経営者からの聞き書きシリーズがありました。どんな落とし穴があるか、大変、勉強になりました。

当事者の話も同じじゃないですかね。穴からの脱出法は、各自、別でしょうが、陥る穴は同じような気がします。

ただ、何処に、どういう穴が開いているか、あったかは、或る程度、離れてみなければ分からない。渦中にある時にはわからない。

だから、今、現に落ちている当事者からすると、上目線とかに感じられて、受け入れにくいのかな??
こんにちは。

これに関しては私も思うところがあります。

私が診断をもらった時最初に思ったことがあります。

人間を車に例えるとして、定型が一般仕様車だとしたら自閉症でもカナータイプはF1仕様車、アスペルガーはラリーカー仕様車。

F1はあきらかに車種が外見から違うし、そのまま公道を走るということは車の特性上まずありません、整備された特別な行動を走るか:モナコGPとかで道路を規制してコースを作る、サーキット内を走るかのどちらか。これを置きかえるなら施設や特別に用意した環境の中で生きるか。そして見かけから違うので割と違いが容易に判別しやすい。

そしてラリーカーの場合、これはあの派手なペイントをはがせば一見外見は普通車とかわりませんが、内容はかなり違います。

ブレーキング、アクセルなど普通車と同じに運転したら間違いなく事故になります。

ところが、問題は周りはおろか本人ですら自分はラリーカーだと気が付いていない場合。

「ここでブレーキこういう風にかければとまるはずなのになんであなたはできないの?」

「ここでアクセルこういう風に踏めば急に速度が上がるはずないのになんであなたは出来ないの?」

でもみんな同じ構造の車種だと思っていっているので同じならできるはずだと思っている:言われている当事者も。

で、出来ないこと、出来ない理由が言っている定型も言われている当事者もわからないからどんどん落ちこむ。

診断をもらって良かったことは、自分がラリーカーだということに気がついたことでしたが、その後もう一つの問題に気がつきました。

要は施設など特別なところにお世話にならないで適応するということはラリーカーで一般道を一般の車のルールで走るということです、パリダカールとかではなく。

であるならば、もともと普通に走るのに適していない構造のもので運転し続けないといけないわけです。

「OK,公道を走ることを決めたのはいいんだけれど、これって普通は誰もやらないから一般的なアドバイスはほとんどあてにならないな」

これで今まで成功本を読んでなんとなく違和感があった理由が飲み込めまhした。構造が違うのに、その構造の仕組みが分からず違う車種の運転方法、しかもそれも具体的な方法が記されていない上に、こちらは同じ車種だと思っているからわからない自分があほだと考える。

それ以降はそれらの本はほとんど読まなくなりました。色々な当事者のブログで案として参考になりそうなものとかも、まず自分自身適応させるためにはどうしたらいいか一回解体して考えるようになりました。

マニュアルとして当事者のブログを使うことはある意味で危険(誰でもそうですけどね、定型の人でも)なのは自分に合うか合わないか、という根本的な部分での適応を考えずにただやっつけ仕事の増築見たいのことをして結果的に不具合が起きるということです。

だから最後に狸穴さんがまとめた2項目、あれはまさにそうだと思います。

Re: 当事者本
そっかあ「同じ当事者なのに…」って読めてしまう部分あるかあ。
やっぱり凹みモードにならないように情報の取捨選択をするのが重要だろうなあ。
Re: 記事にしたのですが
読ませていただきました。

奈良人ちゃんもはじめ凹んだくちだったか。

「マニュアル」かあ、わかる気がする。
ま、マニュアル世代が多いということなのかもしれないけど、
それだけ(時間的に)切実な問題を抱えた人が多いのかも。

前提の「就業のしかた」あたりでも凹みやすいてのもあるかな。

Re: 失敗談のほうが、役に立つ
ヒゲ達磨さん、こんにちは。

失敗談…役に立ちますねえ。
障碍特性によって落っこちる穴は似てますからねえ。
予防策を講じるのには成功談より失敗談なのかもしれません。

失敗例と成功例の対比があるコミュニケーション本なんてのはとても役に立ちました。
さかいさんへ
さかいさん、お久しぶりです。

車のたとえ、とっても腑に落ちるところがありました。

ラリーカーをそれを本人も周囲も気づかずに運転しているなら、事故が多発するわけです。
周りの叱責やアドバイスも的外れになるわけだ!

ラリーカー運転マニュアル(アスペルガー向け世間の渡りかたマニュアル)なんて本ができてくれるとうれしいですねえ。

って、アスペルガー症候群舎は理屈っぽいから、そうとう分厚くなっちゃいそう…。
狸穴さん、

コメントへのお返事ありがとうございます。

「上達の早道はまねることから」
「学ぶことはまねること」

これはアスペルガーには当てはまらないと思います。

アスペルガー当事者同士ですら運転方法が違うのでそっくりそのままあてにならない。

住んでいる環境の道路情報も違えば交通量も違う。

なので、車の癖を個々人で良く見極めたうえで基本の構造をどういう風に改良すれば公道を運転できるようになるのか、これは参考はあれどモデリングはありません。

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