今回で終わりにするのでもう少しだけ(…いや、きょうのは長いんですが)お付き合いいただきたい。
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毎度になるが、一応、女史の講演の動画のURLを貼り付けておこう
テンプル・グランディン 世界はあらゆる脳を必要としている(動画)
さて続き…
報道などを見ていると、発達障害者に対する支援が重要だということは既に社会の共通認識となりつつあると思う。
が、学童向けのSSTはかなり普及してきたし、グランディン女史のような当事者の影響もあってか、才能開発にも目が向けられている。
しかし、成人となると様相はだいぶ異なる。
二次障害の治療を別にすれば、ジョブコーチによる職業支援が細々と行われている程度で、成人のアスペルガー当事者には実際的な支援はほとんどないのが実情だ。
正直、仕方ないと思う。
なにせ、成人向けの支援の枠組みがまだできていないのだ!
医療関係者・福祉関係者よ、行政よ!とっとと考えてくれ~!
と、叫びたい。
が、叫んでもらちがあきそうにない。
ならば考えてみようというのが、本稿である。
私はアスペルガー症候群者に対する支援は基本的に「ハビリテーション」であると思っている。要は、もっている機能の「有能化」だ。
身体障害の領域では当たり前のこの「ハビリテーション」という考え方が、発達障害でももっと普及して欲しいと思う。
さて、このハビリテーションという考え方の上に「医療」「福祉」そして「教育」が乗っかるというのが私の考える支援の形の大まかな姿だ。
社会性の障害、コミュニケーション障害においては、教育は欠くことのできない部分である。

就労支援などもこの構造には代わりがないだろう。
補足する、
アスペルガー症候群の場合、「ハビリテーション」のためには「自己認知」が大きく関わると言うことがある。自己の特性に対して正しくかつ、否定的でない形で認知しておかなければ「ハビリテーション」が却って鬱などの二次障害の種になりかねない。
目に見えない障害なだけにこのあたりが難しい。
特に、高学歴をもちながら社会適応不全を起こしているケースなどでは、それなりにプライドが高い場合が多いので、「できないこと」や「苦手なこと」を素直に受け入れられないといったことが考えられる。
(その結果として予測されるのは、他罰傾向だったり、過剰適応だったりするだろう)
この点をふまえた上で、成人当事者に対する支援の形を考えてみる。
1.障害の状態をアスペルガー当事者が適切に理解するための支援。
2.機能する部分を利用可能な形(技能・職能)にするための支援。
3.必要不可欠な社会的スキル、対人スキルの獲得のための支援。
4.生活スキルの向上の為の支援
5.不得意部分を不利益としないための支援。
6.二次障害予防の為の支援
7.二次障害の治療
さて個別に詳細を設定していこう。
1、障害の状態をアスペルガー当事者が適切に理解するための支援。
自身を知ることが、能力を最大限生かすことにも繋がるし、無理しないことにも繋が
る。そのためのアセスメントが絶対必要だと思うのだ。
「社会的立ち位置の適性」も含め、できれば計量化された資料を基に特性・適性等についてアセスメントが行われるのがいい。現行のWAISやWISCではちょっと力不足な感じが否めない。
(他の知能・適性検査の類については、ちょっと詳細がわからないんですよ…だから残念ながら触れられない)
現行、医療機関がやっているケース、発達障害者支援センターがやっているケース、ハローワークがやっているケースなどさまざまだ。
2、技能化の支援
特性が理解できたところで、「使える形」にしなければ始まらない。
いわゆる職業訓練である。大学や専門学校での学習、職業訓練校などでの訓練、実際に就業しながらの訓練等々、形態はいろいろあるだろうが、そのいずれにせよ、認知特性(視覚優位か聴覚優位かなど)にできるだけ応じた形にしていくための支援が必要であろう。
場合によってはツールの購入補助等も支援の一つとなるだろう。
3、社会的スキル、対人スキルの獲得の為の支援。
社会的スキル、を学習するのは定形発達者も変わらないのだが、大人になるまでに定形発達者が意識せずに学習してしまっていることが、早期療育等を受けていないアスペルガー症候群者では学習できていない場合が多い。(仮に表面的に学習できている場合でも、「納得ずく」でないためにその行動をとることが心理的負荷を伴う場合もある)
そこで、社会的スキル、対人スキルの学習という支援が必要なのだが、「納得が行かなければ実行できない」という特質を持つことの多い障害であるから、理詰めで「どうしてそうするのか」を理解できるような教材・指導が必要になってくるだろう。
4生活スキルの向上のための支援
興味のあることに熱中しても、その他の生活上の処理(炊事、掃除、洗濯、整理整頓等々)が苦手なアスペルガー当事者は多い。(自分のことはこの際棚に上げておこう…汗)。
「じゃあ、全面的にヘルパーさんに肩代わりしてもらおう」というのは、あまりハビリテーション的支援にはならないと私は思う。
原因を探れば、だいたいが、「うまくやる方法を知らない」「やったことが(あまり)ない」「新しいことへの心理的抵抗」「苦手なことはしたくないという心理的抵抗」などが原因であるからだ。
というわけで、最低限家事をこなせる生活スキルをつけることは、性別にかかわらず必要な事である。(結婚して家庭を持った場合の安定度はかなりこの辺のスキルがあるかどうかに関わると思う)
そのための生活スキル学習の機会をもうけたり、テキストを提供することが支援としては重要になってくると思う。また、一時的にヘルパーなどの援助職が家事の構造化を補助するというのも、生活スキルを向上させるための支援として有効だろう。
(生活スキルの獲得は自己肯定感の向上にも繋がると思う)
5.不得意部分を不利益としないための支援。
障害の程度にもよるだろうが、スキルの獲得のための自助努力にも限界がある。
特に対人的な部分に関しては、頭ではわかっていても即時の運用が難しかったり、心理的負荷が高いため短時間しかそのスキルを運用できないといった場合もあるだろう。
職場環境の調整、交通事故の処理、親族間のトラブルなど、高度な対人交渉が必要な場面では概ね対人交渉が必須であるが、かなり高度なスキルを要求される。そのような場面で不利益を被らないようにするためには、仲介者・代理人などの人的援助必要である。
職場でのジョブコーチやハローワーク職員などによる職場の環境調整、弁護士による交渉の肩代わりなどが挙げられるだろう。
もちろんそういった場合の当事者の費用負担を軽減するのも支援に含まれるだろう。
さらに、社会に対して、社会がアスペルガー症候群者を受け入れやすくするための情報を(雇用者のためのマニュアル等)提供したりという活動も広義ではこのような支援の範疇に入ると考えられるだろう。
6.二次障害予防の為の支援
1~5まで挙げた全てが二次障害の予防に繋がっているが、
もう2点、予防のための支援が必要だと考える。
A過剰適応になっていないかどうかの心理面のメンテナンス。
定期的なカウンセリング等で、過剰な負荷がかかっていないか他者の目でチェックしていくべきだろう。(なにせ当事者本人は気がつきにくい場合が多い)
B社会適応を妨げる感覚過敏などへの対策
人によっては投薬が有効な場合もあるし、サングラスや耳栓、ノイズキャンセリングヘッドホンが有効な場合もある。いずれにせよ適切な対策をとれるようにするといった支援が必要だ。医療用具として保険利用で購入できればいいのだが…。
7.二次障害の治療
既に不適応を起こしている場合、二次障害にかかっているケースが多いだろう。まずはその治療が必要なのは言うまでもない。
以上をまとめてみると下記の図のようになる。

とまあ、こんな感じになってくれたらいいよなあ…
と、つらつら考えた訳である。
行政よ!がんばれ!
といったところだ。
他のモデルもあるかもしれない。
ま、ただ、何らかのモデルがないと行政サイドにも
「支援って一体何すれば?具体的には?」
って突っ込まれてしまうだろう。
というわけで、モデルができたところで、私は次のステップを考え中である。
テンプル・グランディン女史の講演からよくもこれだけ引っぱったもんだ…と自分で感心してしまうやらあきれるやら…。
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実はまとめの記事を作成していたのだが、一記事にしても
あまり意味がないだろうと思い、ばっさり削ることにした。
…だもんで、本稿内で簡単にまとめることに。
さて、12回にわたってしつこく連載した訳だが、
社会的生存…これが一番重要なことであるが、現状、アスペルガー者の前には落とし穴がいくつもある。
このための支援が必要だろうということだ。
だが、「支援を!」といっても支援者も当事者も何を支援したら(されたら)いいのか判らないというのが現状だろう。
そこで、アスペルガー者の前にありがち落とし穴、支援を考える上での落とし穴を考えた上で、今回のような支援モデルを作成してみたというところである。
読者の皆様には、長いことおつきあいいただいたこと、深く感謝します!
ご意見、ご感想お待ちしています。
<本稿終わり>

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