定型者の自己イメージとASD者のありのまま願望

時折ネット上でも議論になるネタがある。

「ASD者がありのままでいたらなぜいけないの?」
「私たちはありのままの自分を受け入れて欲しいだけなのに」

というものである。

実際、私もそう思っていた時期があったりする。

自然にやっているつもりなのになぜ浮いちゃうのだろう?
とか思ったことも多い。


さて、結論から言ってしまう。


「ありのまま」は定型者にはギョッとされるのである。


理由は定型さんの思考構造にあるようだ。

模式化して考えよう。



定型発達者の自己表出構造




定型発達者の自己は多層(複数レイヤー)構造をしている。

根っこの自己の上に、複数レイヤーが微妙につながりを保ちながら存在している上に、相対する場面によってどのレイヤーを優先して可視化するか、すなわちどのように振る舞ったらいいか?を「自動的」に選択しているというわけである。


というわけで、むき出しの自己が表現されることはあり得ないのである。


ところがどっこい、ASD者は基本がシングルレイヤーである。
裏表がないという言い方もできるが、非常に単純な表出形態である。
すなわち、意識的に振る舞いを変えない限り基本むき出しの自己となる。


意識を介さないと複数レイヤー処理ができないASD者にとって、「ありのまま」願望があるのはある面当然なのであるが、むき出しの自己を表現する文化のない定型さんとしては「むき出しの自己」を見ることはは結構驚愕の事態であり、かなり気分的に「うっ」とくるものらしい。

というわけで、だいたいにおいて定型さんは

「ぶしつけ」「失礼」「素直すぎ」「押しつけが強い」

などという意味づけを自動的にしてしまうということのようだ。


こうなると定型さん相手ということがわかっている場合、不要な誤解を避ける為に、最低限のレイヤー(振る舞いレイヤーと呼んでおこう)を増築し、切り替えながら対応することが必要となってくる。


定型さんも使っているものなので、振る舞いレイヤーを使用しても、「本当の自分でないので失礼に当たるんでは」「嘘をついているようで申し訳ない」などという心配をすることはさらさらないということになる。


ありのままは個室あるいは自助会等のASD者がマジョリティになる集団においてのみに留めておいた方が
周囲との問題を生じないのではないかと思う。




余談なのだが

ASD者でも、「自分に合う職はどういったものか?」という疑問は持つ。
しかし「本当の自分とは?」という疑問に悩むということは少ないようである。

それに対し、定型発達者ではしばしば「本当の自分とは?」という悩みが生じるようである。

上記のような自己構造をとり、自動で切り替えが行われてしまうため、どの層が本当の自分か?
というような混乱が起こってしまう事によるものではないかと推測する。



補足

本稿では、以下の書籍中にある、ASD者の「シングルレイヤー特性」というものをベースに考えを進めてみた。


4062597063アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える (こころライブラリー)
米田 衆介
講談社 2011-12-17

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