夫が発達障害問題再論(2)-関係改善の可能性がある条件を考えてみる-

ちょっと前記事の話題を続けてみる。

 前記事 夫が発達障害問題再論(1)-あさイチの夫の発達障害特集から考えたこと- はこちら

カサンドラ問題(夫が発達障害でうまくいかなくてというはなし)、まあ、所詮相性という部分が大きいと思うのだが、できることならどうにかしたいと思っている人もいるだろう。

あさイチでVTRで紹介されたのケースは二つとも夫が自分の障害をそれなりに受け入れて、前向きに夫婦で工夫をしていっているorいけそうだというケースだったが、番組末尾で紹介された投書はかなり深刻そうな気がする。

前記事で是非次回はうまくいったケースとそうでないケースの比較をなどという他力本願な期待を書いたが、せっかくの機会なのでネット上にたくさんある事例や、私自身の経験からちょっとその辺の分析をしてみよう。

カサンドラから関係改善へ向かうことが可能な条件とは?

1)まずは夫婦である程度話しができること

何にせよ、話ができないのではらちがあかない。言い方を工夫することは必要な場合もあるだろうが、とりあえず話し合いができる状態でないと埒があかないとは思う。

2)新しいなにかに取り組むことがそこそこ可能なこと

関係改善となればなにがしか慣れ親しんだスタイルとは違うアクションが必要になる。新しいことに取り組むことに対する抵抗が強すぎればそれができない。ASD者は新しいことには結構びびりやすい面はあるが、慣れ親しんだこと以外を全く拒否してしまうようではこれもまた埒があかないだろう。

3)人に対して感謝できること

ぶっちゃけて言ってしまえばあまり他責的でないことが必要なのだと思う。「何でオレばっかりいわれなきゃ(変えなきゃ)いけないんだ」というような被害的な思考のクセがついていると、どうしても他責的になりやすい。そうなれば関係改善のための取り組みなどできようはずもない。

人に感謝できるかというのが被害的でないか、他責的でないかどうかのある程度のバロメーターになるだろうと思う、

4)少なくとも思考の上で自他の区分がついていること

「オレ(わたしの)の気持ちはわかるはずなのでうけいれられるべき」を相手に対して期待し、外れると切れるか落ち込むかといったパターンに入り込む、すなわち夫婦といえど相手には相手の都合、思考、感情があるということを受け入れられない場合はこれまた交渉の余地がないだろう。

とりあえずこの四つは最低限必要なのではないだろうかと思う。そして、この四つはASD者側だけでなく配偶者側にも当然必要とされるものだと思う。

誤学習と自他区分と「夫が発達障害問題」

ASD者と周囲の人間関係を悪くしやすいものとして、身体や感覚面以外の問題としては

  • 未学習
  • 誤学習
  • 自他区分のあいまいさ

が大きいと私は思っているのだが、ことカサンドラ問題に関しては未学習はあまり関係ないだろう。察しの悪さと未学習だけならは学習すればかたがつく部分は多いだろう。

問題は誤学習と自他区分の曖昧さである。この二つが重なってしまうと自己肯定感は低くなりやすいし、他責的、被害的にもなりやすい、下手すると攻撃的にもなりやすい。そして新しい取り組みへの抵抗感も強くなりやすい。

深刻なケースはこういった問題を抱えているのではないだろうかと推測する。

ただまあ「割れ鍋にとじぶた」ということわざもある。

誤学習と自他区分の曖昧さを夫婦で持ちながら、被害原因や他責の矛先が家庭外に向けることで一致団結し、夫婦間はそこそこうまくいっているというケースもあると伝え聞くので夫婦というのはわからないものである。

話を戻すと、改善が難しいケースというのはASDサイドが誤学習が重なって雪だるま状態になっていたり、自他区分の状態の夫婦間で差が大きい場合なのではないだろうかと思う。

誤学習の雪だるまを解除するのはやっかいだ。誤学習を発見するのも、そしてどこからほぐしていったらいいのかもわかりにくい。本人に何とかしなきゃという自覚がないのならなおさらだ。

子どもがいるとか、経済的な問題とかいうのもあるだろうし、見捨ててしまうようで気が引ける面もあるのかもと思うが、人間できないこととできないことがある。

察しが悪いのが問題の主なところというなら関係改善に取り組むのもありだと思うが、他のやっかいな問題が背景にでーんと構えているようなケースについてはあまり深追いしないほうがいいのではないかなあと思うことが多い。

 

旦那(アキラ)さんはアスペルガー 奥(ツナ)さんはカサンドラ

野波 ツナ コスミック出版 2014-12-19
売り上げランキング : 7874
by ヨメレバ
アスペルガーのパートナーのいる女性が知っておくべき22の心得

ルディ・シモン スペクトラム出版社 2010-11-26
売り上げランキング : 3281
by ヨメレバ





関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加

 


コメント

はじめまして。
今さらながらコメントします。

カサンドラ症候群に関しては、自己愛性ですとか境界性といったパーソナリティー障害傾向のある奥さんが、過剰に問題視している可能性はないですかね?

あの手のパーソナリティー障害傾向がある人は特別扱いされないと機嫌が非常に悪くなることがあります。
「こういうことして欲しいの。察して」というものを旦那が察しても「ムシのいいこと考えているな」と思って無視する。これを「旦那がアスペルガーだ!」と騒いでいるだけ、という事例も混ざっているのではないかな?と思います。

少なくとも私あえて無視する人間ですし、職場にいますよ、図々しいから放置していると怒りだす女性。
赤の他人でもこれなので配偶者だとなおさら、ということは充分ありえるのではないかと思います。
スタルカさんへ
スタルカさんはじめまして。
亀レスでごめんなさい。

察して欲しいの度が過ぎた人…の場合というのはあり得るとは思います。
ごっちゃになってしまっているんでしょうね。
その辺ちゃんと区別できるようになれば良いんですけどね。
この反応自体が
パートナーがカサンドラになる原因。

ASの、葛藤や不安を口にするパートナーに対する共感性のない反応こそが、パートナーをカサンドラにする原因の1つなんです…って理解できても実感としてはわからないですよね。

そういうAS本人の気付かなさ、理解できなさが非定型といわれる所以です。

定型発達者はわざわざASと結婚なんてしたくないんです。
ただ、パターン化して表面上うまくやる外モードが発達したASの方で、結婚した途端にオリジナルモードでパートナーに接し始めると、パートナーは「結婚前はちょっと変わった人だと思った程度だったのに、結婚したらまるで別人格!結婚前の人格は詐欺だったの!?」となるわけです。

人に交われないのに、なんとかして人に交わろうとされるの、定型発達者にとっては大変迷惑なので、ブログ著者さんのようにAS同士で平和に生きてて欲しいです。
お願いします!!
No title
ASだけが悪いわけではないです。
定型だってASを毛嫌いし、自分が正しいとの価値観を一方的に押し付け、ASは非人間だと言って悪者にするのだから充分酷いですよね。

いくらご自分の人格が未熟だからと言っても、ASに攻撃するのはやめてくださいね!被害者ぶらないでくださいね!
定型だって立派な加害者ですよ!!

コメントの投稿

非公開コメント


ブログ内検索


サイトマップ(全記事一覧)はこちら

アスパラガスの会のお知らせ

成人ASD(自閉症スペクトラム障害)者のための自助会:アスパラガスの会 ご案内

アスパラガスの会は、大阪南部を拠点に活動する成人自閉症スペクトラム障害者の自助会です。1ヶ月に1回の集いを中心に活動しています。アスパラガスの会ホームページはこちら

アスペルガーライフblogの発達障害関連動画

発達障害の常識とやらにツッコミをいれてみる !

発達障害に関するよく言われるセリフってなんか変!

自閉症(ASD)児者の聴こえ方を疑似体験!

自閉症児者の聴こえ方を定型発達の方に疑似体験していただける動画を作ってみました。

この動画に関する詳しい説明はこちらの記事をどうぞ。

うわ!狸穴猫が本に登場してしまった
かなしろにゃんこ。さんの新刊に狸穴猫が登場します。
スポンサード リンク
便利ツール(別館)
管理人からのお願い

記事に関係ないコメント・個人的な相談にはお返事できない場合があります。あらかじめご了承下さい。
また、できるだけ個人的な相談はご遠慮下さい。

RSSフィード