ASD者の聞き取りの苦手さと「言葉を意味として捉える」ということ

ASD者の聞き取りの苦手さの実態

ありふれた会話から

たいそうなタイトルをつけたが、私が年中やらかす聞き取りエラーについての話である。

以下は一昨日の晩ご飯後の茶の間での会話である。

 

ミチャポン:ママ~、宿題わからないから教えて~。

ミ:ママ~、聞いてる~!(怒)

猫:はいはい宿題ね、どこがわからないの?

 

字面だけ見るとどこにでもありそうな会話であるが、実は私の聞き取りエラー現象とそのぼろ隠しが隠れている。

 

脳内再生でボロ隠し

正直なところ、はじめの音が聞こえたところで「音が聞こえているかな?」程度の認識なのだ。

そしてミチャポンから「ママ、聞いてる~?」という苦情が言った時点ではっとして、「さっきのはミチャポンの声だったんだ」と認識する。

だが、まだこの時点でははじめの音声の意味は認識していない。

苦情がきたから返答をしなければまずそうだと思い大急ぎではじめの音声を脳内で再生する。

脳内再生された音声からはじめて意味を認識し返答をするという行動をした。

図にしてみるとこんな感じ。

 

saisei.jpg

認知のタイムラグ

上の図中、Bの音声はほぼリアルタイムで意味を認識しているのだが、Aに関しては音→声でまずタイムラグが生じ、さらに声~意味でもタイムラグが生じている。

 

寝不足などといった脳みその疲れがたまった状態だとこういった認知のタイムラグが発生することは結構多い。

 

聞こえているのか聞こえていないのか...というと脳内再生できるのであるから聞こえてはいるのだが、意味を捉えそこなっているのである。 

 

ミチャポンはさすがに10年以上私と付き合っているのでなれたもので「あーあ、また聞いてなかったでしょw」「ママまたぼけてるな~w」ってなところに落ち着くので家の中でやる分には取り立てて実害はない。

 

しかしこの現象、脳みそが疲れた状態だと。顔つき合わせて話している状況でも起こる。

 

音はきこえてはいるし、あまり聞き返すのも相手に失礼かとも思うので基本的には脳内再生で対応するのだが、頻発するとスピードが会話に追いつかなくなり、聞き返すことになる。

 

だいたい疲れている時ほどこの現象は起こるので、疲れた頭にむち打って脳内再生しまくったり、聞き返すかどうかの判断をすることになるので脳の疲れが雪だるま式に増えることになり、後で疲れがドッときてヘロヘロになるので、あまり無理はしたくない。

 

まあ、非礼のないように聞き返せばいいことだからさほど気にしているわけではないが、聞き返しが多くなると「話をちゃんと聞いてない」と解釈されるという会話事故も起こるので、ヤバそうなとき(頻発しそうとか、相手がむくれやすそうだとか…まあいろいろ)は「聞き取りが苦手」とあらかじめ言っておくという安全策をとることもある。 

 

聞こえているのに聞き取れないという現象

なんでこんな話を書いたかというと「聞こえているのに意味に変換されていない」という現象は意外に知られていないのかな?と思ったからだ。

 

  1. 音の認知
  2. 声としての認知
  3. 意味としての認知

 

この3つの認知に意識できるほどのタイムラグがないのが普通なのだろうし、私の場合に’してもタイムラグがないことの方が多い。

だが、タイムラグが生じてしまうこともあるのが自閉脳なのである。

 

「人の発した音声をリアルタイムで意味に変換する」は実は結構高度な活動である。

 

というわけで脳みそを楽にしておくことは非常に重要であるからして、この記事を書き終えたら私は脳みそのために昼寝をすることにしよう。

 



↓下記は高次脳機能障害の本だが、自閉脳と似た現象が多くてビックリ。

 




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コメント

No title
「大人の脳性マヒ者の実態調査」を読んだ時、
彼らには元々背骨の歪みがもれなく着いてくるので、
頸椎にも無理がかかっていて、
健常者よりも早く影響が出やすいと書いてありました。
ASD者の姿勢の悪さももれなくついてくるのでしょうね。
脳自体の特性もあるのでしょうが、
体の疲れと共に脳も疲れるのは定型者も同じです。
確かにASD者の言語変換機能にはタイムラグがありますが、
定型者同士の会話も、呼びかけて相手の意識が
こちらを向いてから本題を話す、話の途中で間を置く
ようにしてほしいものですね。
カフェで落ち着いてお茶したいのに、
ずっと喋っているオバチャンに閉口します。
相手の相槌すら終わらないうちに喋るので、
相手はコメントを挟むこともできません。
内容も解らず聞かされると、
その人が携帯電話で喋り続けているように
思えます。
口から出る言葉は通じない、のを大前提の
会話が必要だと思います。
だから学校で、先生も教授も黒板
(ホワイトボード)を使いますよね。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
なんと!同じです
脳内再生やってます。
普段は「何か音声が聞こえた」→「よく聞こえてないので反射的に聞き返す」…を3回位繰り返して嫌な顔されるので、そうなってからじっくり脳内再生をして「あ、これか!」と納得します。
まぁ、上記の様な事はだいたい家族相手だけで、他の人相手だと、一回聞き返して分からなかったら、おとなしく脳内再生しています。

音声は届いているから耳の問題ではないとして、耳から脳へ行く通路に問題があるんでしょうかねぇ…。
No title
この間、3歳になる孫に会いました。
6歳のお兄ちゃんよりしっかり者なのですが、
言葉がハッキリせず、二語分しか話せません。
彼女は友達や大人が質問すると
質問だということは理解しても、
どんな内容かは理解できず、
とりあえず頷いてイエスの意思表示をします。
8月に滲出性中耳炎のチューブ挿入手術を
したので音としてはちゃんと聞こえています。
脳の中で意味変換ができていないということが
見てとれます。
それでもこちらの目を見て一応は
「コイツは何を訳の判らんことを言っているんだ」
という表情をしているので、
昔の出始めのパソコンのように彼女のCPUも
「ウィーンカチャッ、ウィーンカチャッ」と
候補を探してるんだろうと期待してます。
ここでトンチンカンなおしゃべりを一方的に
されるよりは良しとしようと、
私は私を納得させています。
こちらを見てくれているうちに
意思疎通が図れる期待をして
時々手話のようにジェスチャーを
交えて話すようにしていますが、
私が忘れっぽいので今一つ通じていないようです。
とんとんさんへ
いわゆる大阪のオバちゃんにはどう頑張っても勝てません、あきらめますw。
Re: なんと!同じです
結構脳内再生する人はいるみたいですねえ。
ちなみに、相手の言を一旦思い切り聞き間違え、素っ頓狂な反応をする前に「あれ、変だ」と気がついて脳内再生ってパターンもありますw。
とんとんさんへ
> 「ウィーンカチャッ、ウィーンカチャッ」と
> 候補を探してるんだろうと期待してます。

そうなんでしょうねえ。
そういうときに焦らずにつき合ってくれる人がいるといつの間にか高性能になるんでしょうねえ。

高次脳機能障害と自閉脳
はじめまして。突然のコメント失礼します。
子供が先日、自閉症スペクトラムと診断されました。
私自身にもその傾向はあるのではと思っています。
しかし本を読んでも話を聞いても、障害の実態が掴みにくく、ネット検索で当事者の方のブログを探し始めたところです。
高次脳機能障害と自閉脳が似ているとのこと。なのに何故世間の認識はこんなにに違うのか…と思ってしまいました。
前者は、事故などの後遺症として「身体障害」のイメージがありますが、後者は「気の持ちよう」「根性論」「気のせい」とのイメージが根強いと感じます。(夫は明らかにそう思っていますし、私も「発達障害は気の持ちようではなく、脳機能障害だ」と言葉では知っていても、いざ子供を目の前にすると「何で出来ないの!やらないの!」と最終的には怒鳴ってしまいます。)
子育て迷走中です。
これから過去ログも読ませていただきます。m(_ _)m
Re: 高次脳機能障害と自閉脳
はちみつさんはじめまして。

確かに診断基準はあちこちにでてくるものの、この障害はいったいどういう障害なのか、自閉症児者のなかでどういうことが起こっているのか?という部分はまだまだ知られていない部分が大きいと思います。

当事者が気がついてなかったことは語りようがないので出てきにくいです。
そういうものこそがはちみつさんのおっしゃる「障害の実態」なのかもしれません。
私自身も「ええ!これって普通ではないの?」というのが未だにポロポロ出てきます。

 
 


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