前々回から、かなしろにゃんこ。さん(←リンクはにゃんこ。さんのブログ)の新刊の発達障害本に関連するシリーズ記事を書いてきたのだが(そのあたりの経緯はこちら→その1、その2)、書店発売日も過ぎたことだし、そろそろろレビュー書いてしまおう。
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発達障害 うちの子、人づきあい だいじょーぶ!? (こころライブラリー) かなしろにゃんこ。 講談社 2016-07-26
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発達障害コミックルポシリーズの第三弾
この本は「発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!?」の続編にあたる本だ。
前作がいまある支援策、支援システムの紹介に重きをおいたものであったのに対し、今回のものは人づきあいにスポットをあて、発達障害児者のQOLを上げるための家庭でできる対策に力点が置かれているように思う。
あ、これ(上記)では堅すぎる…
もうちょっとロコツにいってしまおう。
「発達障害者の人づきあいでのズッコケかた」
と「ズッコケるメカニズム」、
そして、
「ズッコケないための手近な対策」、
「ズッコケにくくするための考え方」
「ズッコケにくくするための子育てのポイント」
が、身体や感覚といった面からの影響も含めて描かれている。
といったところだ。
マンガでリアルな当事者像を描きだしながら進むのでわかりやすい(コマ割りも特に複雑じゃないのでマンガが苦手という人でもわりと読みやすい…と思う)。
ごく個人的な感想から
アスパラガスの会や狸穴猫が一部登場したりネタパーツを提供したりしているので、その部分に関しては内容を事前に知っていたわけだが、他の部分については数日前に講談社から献本が届くまでは読んでいなかった。
読んでまずはじめに思ったのは。
「取材に応じてよかったな~」
ってことである。
取材を受ける立場として、うまいこと切り取られてどうも主義主張と合わない方向性の中に突っ込まれる...のが気になるポイントだが、実は今回はそーいう心配はあまりしていなかった。
理由は簡単、かなしろにゃんこ。さんのシリーズ前作を読んでいたし、取材以降のやりとりが充分に信頼できるものだったから。
で、何がよかったな~のネタだったかというと、
「これは役立つ!そして暗くない!」
ということだ。
役立つ本に一枚噛めたとなれば取材に応じた方としてもそりゃ嬉しい。そして何かと悩みがちな発達障害関係者にちょっとでも明るくなってもらえるような本だったらなお嬉しいというわけだ。
発達障害者のリアルワールド
さて、それではちょいとレビューっぽく書いてみよう。
内容全般の紹介は講談社にこの本の特集ページがあるのでそちらを見ていただいた方がいいだろう。
私はそこに書いてない部分について書くことにする。
マンガならではの表現で発達障害者の感じ方が「見える」
登場人物はほとんどが発達障害当事者、およびその家族である。全国を飛びまわって多くの方に取材したそうで、そこから抽出した発達障害者のリアル像が満載である。
つまり当事者風味はきわめて濃厚、医療関係者や支援者の目といったフィルターを通さない生の発達さんワールド広がっている。
しかもマンガという表現手段によって単なる「あるある話」から「発達障害者の外面と内面の不一致」や「ずっこけた時の内心」を視覚的に理解できるようにまでブラッシュアップされている。
こういった部分、我が子が理解しにくいといった思いに悩む発達障害児の親御さんにとって多くのヒントになると思うし、支援者にも対象者理解の助けになるだろう。当事者にとっても周囲の人に自分の中で起こっていることを説明しやすくなる。
イラストやマンガを取り入れた発達障害の本は多いがここまでうまくマンガで表現されたものはなかなかお目にかからない。
メジャーコミック誌で描いていた漫画家さんだからこその仕事だと思った。
当事者のふつーの悩みをどう解決するか?
リアル当事者の実録メインに構成された本だから発達障害者の悩みは当然沢山でてくる。
だが、悲壮感がない。
当事者本にありがちな理解クレクレ臭もない。
まあ狸穴猫が登場する章にそれがないだろうというのはこのブログに何回か足を運んでくれている方には簡単に想像つくだろうが、他の全部の章もそうなのだ。
そして笑える。
人づきあいの上での困りごとに直面したふつーの発達障害当事者があれこれ解決策を探ってきた生活の中での道筋、そしてそのための自助の策、支援の策があれこれ紹介されているがふつーの生活の中での解決の模索である。
そう、ほとんどの発達障害者はふつーにくらしている。
ふつーの生活をしようとする当事者のふつーの困りごとがなぜかふつーではないだけだ。困りごとではあるのだがコミカルなものになってしまう。
今風のいい方をすれば「ネタ的」とでもいうのだろう(我が家もネタ満載だからこのブログに大爆笑カテゴリーがあるし)、この本はそのコミカルさもしっかり味わえる。
そりゃ困りごとではあるので、深刻になろうと思えばなれるのだが、悩んでいてもはじまらないならコミカルさを味わっちゃったほうがお得である。
「どうやって接したら...」と悩むご家族、支援者さんが肩の力を抜くきっかけになるかもしれない。
いつからでもスタートできるということ
この本はもちろんなんたら療育の本でもなんたら療法の本でもないので系統的な手法が書かれている本ではない。リアルの当事者が泣いて笑ってゆる~く取り組んできたいろいろで構成されている。
支援機関による支援のシーンも描かれているが、それも日常のくらしについてのものだ。その日常生活の中でいうのが重要な視点だと思う。
だからこの本には
「これができてなきゃ次には進めない」とか「この時期にやらなきゃダメ」<
ってなものはない。
つまり...いつからでもスタートできるものばかりである。
当事者の人づきあいの問題を感覚の問題との関連も含めて取り上げているというのも興味深いポイントだが、
この「いつからでもスタートできる」というのがこの本を通してあるような気がする。
もしかしたら、それこそが、発達障害の息子さんと泣いて笑って工夫しながら暮らしてきた、かなしろにゃんこ。さんが読者へ伝えたいことなのかかもしれない。
ちょっと感動的なエピローグを読んで私はそんなことを思った。
と、ちいと含蓄深げな締めくくりをひとしきり書いたところで、間違いなく蛇足であるもう一つの感想をかいてしまおう。
エピローグのネーム(企画段階の下書き)読んでまず思ったのは...
うわ~!酒しこたま飲んで上機嫌で言いたいことほざいてたタヌキ(亭主)のセリフが超感動ネタになってる!!!!びっくり!
であった。
いやほんと、ものごとは一面だけでは語れないものである。
そういや狸穴猫やアスパラガスの会がどの辺に出てくるのか書くのを忘れてた。
1章はアスパラガスの会がネタに、そして2章、3章は狸穴猫のインタビューがネタに、そしてエピローグにアスパラスタッフと狸穴家の面々が登場します。
▼この本は泣けた…
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